番外

□また会う日まで
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真っ白な花を花屋で買い、セーラー服の上にはダッフルコートを着込んで歩き出す





向かう先は、海のそばに小さく佇むお墓だった



「兄さん、会いに来ました」




youは花を手向け静かに目をつぶり手を合わせた




「you、何をしている」



ゆっくり、目を開けるとそこには当たり前のように織田作之助が立っていた


見慣れた赤髪、すこし髭の生えた顔

懐かしい声



「何をそんな驚いた顔をしているんだ」

「わたし驚いた顔してた?」



なんで兄さんを見て驚いていたんだろう




「なんだか兄さんに会うの久しぶりな気がして」


「そうか」


兄さんはそう言ってすっと目を細めた


「どうだ、最近は」


「毎日楽しいよ、学校でも友達ができてそれに…武装探偵社も…」



武装探偵社ってなんだっけ??
わたしは、ポートマフィアなはずじゃ


首をかしげるyouを織田作之助は優しく見つめていた


「太宰とは上手くやっているか」


「うん、太宰さんはまだ自殺ばっかりしてるけど優しくしてくれるよ」


「そうか、まだ自殺しているのか」


youはクスクス笑った



「この前なんて、自殺するって言って家に帰ってこなくて…」


家?
わたしは、兄さんと住んでるはずじゃ


「わたし、なにか大事なこと忘れてる気がする…」


そう呟くと、兄さんは優しくわたしの名前を呼んだ


「you、その花はなんだ?」

「えっ…命日だから買ってきて…誰の?そうだ、兄さんの命日」


なんで忘れていたのだろう

今日は兄さんの命日で花を買ってきたのだ


ここは、兄さんのお墓だ


なんで忘れていたんだろう



「you。おまえは昔から少し抜けているから心配していたが、元気そうで安心した」


そう言って兄さんは大きな暖かいその手で、わたしの頭を撫でる


わたしの頬をすっと涙がつたって落ちた





ーーーyou


ーーーyou



誰かが、わたしを呼んでいる

「…んっ」

その声にすっと目を開くと目の前に太宰さんの心配そうな顔があった


「you心配したのだよ、帰ってこないから」


「…太宰さん…わたし、なんでこんなところで寝て…」

周りを見回すと、わたしは兄さんのお墓に寄り添って眠っていた


頬を触ると濡れている

「なんで…泣いて…」


「とにかくよかった、探偵社総出で探していたのだよ」


「ごめんなさい」


太宰さんのの差し出す手を掴み、立ち上がるともうあたり一面を夕日が包んでいた

「帰ろう、you」


太宰さんが微笑みながら言い、わたしもはい、と返事をしてお墓に白い花を手向けると歩き出した





「私、忘れ物したみたい。先に行っていてくれるかい」


駐車場に国木田君がいるはずだから

そう付け加え、youを先に行かせると太宰は墓に向かった


「やあ、織田作」


そう言って手を挙げると、墓にもたれかかっている織田作も手をあげる


「最近どうだ、太宰」


「いやね、いい自殺法を試しているのだけど少しも死ねないのだよ」



「相変わらずだな」


「ああ、相変わらずだよ」


太宰は肩をすくめたあと、少し恥ずかしそうに頭を掻いた


「君に言われて、人を救う仕事をしているよ。」


織田作は、少し目を見開きすぐに優しく細めた


「太宰、youを頼む。あの子は抜けたところがあるから」

今日は、俺が死んだことを忘れていた

と付け加えると、太宰がふふっと笑う

「youらしいなあ、でも君にそっくりだよ織田作」

「そうか、俺に似ているのか」


「任せなよ織田作、あの子はわたしが幸せにするよ」

そう言うと、織田作が海の方に視線を移し、微笑んだ








「太宰さん〜!!!」

遠くで、youの声がする


太宰が声のする方に顔を向け、もう一度墓に目を移すとそこにはもう彼はいなかった





「また来るよ、織田作」



そう呟き、コートを翻して歩き出した



白い花が、その声に答えるように風で揺れていた

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