恋愛ストレイドッグス


□人を殺して死ねよとて
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夜の街を歩きながら、そういえば
わたしが小さい時、兄さんが帰ってこなくて探しに行った時があったなと思い出す


たしか、男の人にさらわれそうになって助けてもらったんだ

顔は覚えてないけど、男の人に助けてもらった

初恋で、それ以来会えなかった

その人の顔を思い出そうとしてもぼんやりとしか思い出せない



どこか寂しそうな綺麗な男の人…太宰さんに何処となく、似ていたような

そんなことを考えている場合ではない
そうだ太宰さんを探さなければ

youは再び足を早めた


夜の街はあの頃より大人になった今でも少し怖くて、不安になる



太宰がもし、ポートマフィアに捕まっていたら


いや、太宰さんは危機察知能力高いからそんなはずはない

でも、もしかしたら怪我をして逃げられないのかも…


そこまで考えてますます不安になる


しかし、横浜の街を歩いても歩いても太宰の姿は見つからなかった

「お、女子学生じゃん」

「お嬢ちゃん、こんな時間になにしてんの」

身体中にピアスをした怪しい男たちがyouに話しかけてくる


「人を探してるんです、急いでますので」

そう言って会釈し立ち去ろうとしても男たちはなかなか道を開けてくれない


「いいじゃん、一緒に遊ぼうよ」

「ちょっとだけだって」


めんどくさいなあ

男に取り囲まれどうしたものかとyouが困っていると

「youちゃん?!」

と聞き慣れた声がした



振り返ると、敦が立っていた


天の助けとばかりに嬉しい気持ちと、太宰ではないのかとがっかりする気持ちが入り混じる


「youちゃんになにをしているんですか、離してあげてください」

と敦は威勢良く言ったものの

「あ?!関係ねえだろ」

「気に食わねえなこのガキ」

と今にも襲い掛かりそうな男たちを怖がりyouの後ろに隠れてしまう

いや、助けにきたんじゃないんですか敦さん

ヘタレな敦の様子にyouは呆れた顔をした
でも、だんだんそんな様子が面白く思えてきてくすくす笑う

「仕方ないですねえ」


と異能力を発動させ周りの時間を止め、敦の手を掴んで走り出した


youの異能力では、youが触れているものの時間だけは動く


「ええええ!!!時間が止まってる」

走りながら敦は目を丸くした


「わたしの異能力初めてですよね、これくらいしか使えないんですけどねえ」

敦の手を引っ張りながらyouは悪戯っ子のように笑った


少し走って、海のそばの人気のいない場所に着くと異能力を解除した

「敦さん、声かけてくださってありがとうござきました」

youがお礼を言うと

敦は
「ごめんね…何にもできなくて…」

と申し訳なさそうに頭を掻き、そのすぐ後にはっとした表情になる

「でもこんな時間になんであんなところにいたの危ないじゃない」



「そうでした、実は…」

太宰が帰ってこなくて、メールも電話もないことを伝える

youの顔からはいつもの柔らかい笑顔が消え、
すっと目を細め海の方を見た


潮風で、youの髪がなびき、月明かりが寂しそうなyouの顔をうつしだす

敦は思わずドキッとしてしまった


youちゃんってこんな大人っぽい顔するんだ


なにを考えてるんだ僕

とばかりに両手でパチンと自分の頬を叩き、youと目線を合わせるように少しかがんで言う



「家にもう太宰さんいるかもしれないし、今日は危ないからもう帰ろう?帰ってなかったら明日探偵社の人たちに頼んでみようよ」



子供に語りかけるような敦の優しい声と笑顔にそれもそうだと思いyouはうなずいた

2人はそのまま横浜の街を後にし家に戻った
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