恋愛ストレイドッグス
□人生万事塞翁が虎
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「あ、あの川に流されてましたけど...大丈夫ですか」
いま起き上がった男に恐る恐る少年が話しかけた
すると「たすかった...」とつぶやくと同時に
「−−−−−−−ちっ」
と眉間にしわを寄せながら舌打ちをした。
そしてゆっくり立ち上がった
「君かい、私の入水の邪魔をしたのは」
「ぼ、僕はただ助けようとしただけで...え?入水?」
入水という聞きなれない単語に少年は反応する
「知らんかね、入水...自殺だよ」
こともなさげにつぶやくこの男にyouはため息をつく
案の定、このごく普通の少年は「自殺?!」と普段使用しない言葉に取り乱した
「そう、私は自殺しようとしていたのだ。それなのに君は余計なことを」
あからさまに少年はなぜ今自分が怒られているのだ、という顔をしている
かわいそうに、この人を助けたばかりに...いつも振り回されている側であるyouは心底同情しながら
「助けてくれた人をこまらせないでください」
と男につぶやく
「you、君は助けてもくれなかったじゃないか」
「今日は1回もあなたに合わないし、バイトはないしとてもいい日だったんですそれなのに...」
とyouはため息をついた
わたしたちの話を聞いていた少年は怪訝そうな顔をしている
おおかた、この二人知り合いだったのかと考えているのだろう
「まあ、とはいえ人に迷惑をかけない清くクリーンな自殺が私の信念だ。だのに、君には迷惑をかけた。これは此方の落ち度、なにかお詫びを…」
――――――ぐううううう...
男が少年に話しかけたのと少年のおなかがなったのは同時だった
「おなかすいてるんですか」
youが少年に話しかけると少年はさみしそうな顔で
「実はここ数日何もたべてなくて...」
というと同時にまた腹の音が鳴り響く
しかし、今度の出所は少年ではなく目の前の男のものだ
「奇遇だな、実は私もだ」
そういいながら男がポケットの中身をだすとカエルが飛び出す
「ちなみに財布は流されたようだ」
こともなさげにいう男にyouは本日何度目かのため息をついた
「もしよければわたしが...」
とこの哀れな少年にこの不審者を助けたお礼をしようと思った矢先