06/21の日記

23:00
勝手気まま*ひばでぃの
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虫が良すぎる。
何年も放置しておいて、今更なんの用だ、と言われても仕方ないかもしれない。

「……よぉ」

変わらず、日本の並森という世界から見れば何の変哲もない小さな町で、今も風紀委員をしているらしい。
さすがに学校でのお遊びの役員ではない。
最早、一端の組織だ。

神社の階段の、上がった先の鳥居の手前にディーノは足を止めた。

会いに来たのはいいが、手土産も何も持っておらず、身体ひとつで来てしまっていたことに、ようやく気付いた。
かつての、教え子は大変気難しく、なついてくれるまでとても長く険しかった。何せ、訪ねれば決まって、問答無用の格闘をしていた気がする。
相手は殺す気でいたが、ディーノとしてはまだまだ可愛い教え子で、況してや、弟分のファミリーだ。間違ってもディーノには殺せないのである。
それを敏感な子供は直ぐに感じ取ったのか、少し手合わせすれば、殺る気をなくしこちらにも何の興味を示さない。
そんな子供に、苦笑を浮かべ、少し自分の話をしたあと、帰る。
聞いてるのかいないのか。
勝手に来て、勝手に帰って。
当時、自身は立派に成人したというのに10年前の自分を思い返せば、とても図々しかっただろう。

「……いつまでそこにいるつもり?」

「ヒィッ…!」

趣味が悪い。
気配を消して背後から声をかけるとは。
思わずディーノは短い声をあげてしまった。
恥ずかしい。


そんなディーノの様子に雲雀はニッと嗤う。
意地の悪いやつだとディーノは内心毒吐いた。


「僕に用があるんだろ?」

来なよ。
そういって、雲雀はすたすたと勝手に行ってしまう。

カラコロ

下駄の音が響く。
雲雀は日本がとても好きで、今では日本人でさえほとんど履かないだろう、着物や下駄を彼はこよなく愛している。
仕事のときは流石に、スーツ姿であるが、家の中では着物姿しか見たことがなかった。

どんどん遠ざかる雲雀の姿に、母国の言葉で俗語がつい口にでる。
ディーノは後を追うしかなかった。
途中、転んだりけつまずいたりしながらも、雲雀の後を懸命に追った。


(……おっかしーな。調子悪いのかな?)

(貴方、まだその体質治ってなかったの……)




***


まさか、近代的装置を存分に取り入れた玄関を通り抜けた先に、広々とした日本空間がそこにあった。
最近では、どの国も日本ブーム到来で、よくテレビで日本の庭園を紹介しているのを何度もみたが、これぞ正しく本場といった具合か。
煌めく水面に、その上に架かる石橋。
周りは質素ながらも存在感溢れる木に草花。
これが、わびさびなのか。


「なに、珍しくもないでしょ。」
沢田綱吉のとこにもあるでしょう。


「いや、だって、ツナのとこはもう少しこぢんまりしてるし。」

「そう。」

そんな雲雀は、縁側で座布団を敷いて座っていた。

この庭の一番いい眺めに雲雀はいる。
そして、ディーノは雲雀の斜めに位置する石の道で立っていた。

「こんな話するために、僕のところに来たのかい?」

「えっと……」

「まさか、本当にただ会いにきた、だけとか言わないよね。」

「……」

沈黙が落ちる。
日本では静寂の音というものがある。
今が正にそうだ。

シーーン。


気まずい。
きっとあの音はその気まずさも表しているのだろうと、ディーノは身を持って学んだ。


雲雀はじっとディーノの目を見据えていたが、ディーノのあまりの狼狽ぶりに嘘でないことがわかると、溜め息がつい溢れてしまっていた。

「呆れた。」

「悪い。」

「なにが?」

「その、ずっと、会いに来なく、て……?」

「どうして疑問系なの」

「あー……いや、俺、勝手に来て、勝手に帰っただけ、だったような……」

ディーノの記憶には雲雀から一度も日本に遊びに来いだなんて、誘われたことは無かったように思った。
実際にはそんな仲睦まじい関係ではなく、もっとずっと殺伐としていた。
それが、どうしてかディーノの中では、あの時、あの空間では憩いの場だったと記憶していた。
空気が時間が穏やかに流れて、ほんわりと二人を包んでいたように思う。
だって、雲雀は一度もディーノの話を遮ったことはなかったから(仕事の話は除く)
帰れと手酷くされたこともない(それに近いものはあったがディーノの中では存在しない)


「いいじゃない、それで。」

「……え?」

「貴方のやりたいようにすればいい。会いたいときに会いに来ればいい。僕も僕のやりたいようにする。会いたいときは会いに行くし。」
それでいいじゃない。


そういって、雲雀はいつからか用意していたお茶を飲んで。
その隣に、座布団とお茶が用意されていることにディーノはようやく気付いたのだった。






☆・゚・*:.。.*.。.:*・☆☆・゚

勝手気ままな師弟。
という感じです。
雲雀さんもディーノさんもそんな感じしました(*´∇`*)
久しぶりにひばでぃの本を購入して、思い出しながら書いてみました。
連載終了からだいぶ経ちましたので、結構忘れてしまってますが、懲りずに思い出したときに書いちゃいました(*´U`*)

もう一度、スピンオフ作品でないでしょうか。



あと、ディーノさんに用意した飲み物は、ほんのりしびれ薬なんか入ってて。

「しばらくこっちで身元を預かるから。」

「Σええ!?!ディーノさん、大丈夫なんでしょおおねえぇ!」

「君、沢田綱吉はあの人を前に冷静でいられるのかい?」

「……本当にいい加減にしないとヴァリアー出動させますよ……」

10年後のディーノさんはとてつもなくエロいから、雲雀さんはじっと耐えられないのではなかろうか。


そんなひばでぃのに幸あれ゚+.(・∀・)゚+.゚

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