文章
□水中作家
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携帯が落ちた。
いや、現代ではスマートフォンというべきか。長ったらしい名前である。
それが水の溜まった浴槽の中に落ちた。
正しくは落としたのだ。
理由は聞く?聞かない?
あぁ、何だ。聞くのか。
とくに大層な理由はない。
たまになるアレだよ。
え、アレが分からない?
君もそれなりに無粋な人間だなぁ。
心の中一面に水が満ちているような、あの感覚。
不思議と心が落ち着くんだよ、けれども全てを投げ捨ててその深い水に沈んでしまいたい。
なに、私にはよくあることさ。
多少勿体なくは思うけどね、それ以上に私は水に浸っていたいのさ。
そして水を感じながら物語をまた紡ぐ。
なに、最悪君の連絡先が入っていればいいものだろう。
また明日買うよ。
締め切りもないだろう?
あぁ、大丈夫。溺れなんかしないさ。
この水は私の水だ。中で息が出来るのは当たり前だよ。
じゃあまた明後日。
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