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□少女
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少女の目の前でその両親が殺された。
殺人犯となったその青年に少女はいつもと変わらないだろう目を向けた。
青年は殺したかった憎い男女を殺して心が晴れた。それと同時に自分が犯したことに恐怖、後悔をした。だがそれ以上に少女の目に恐怖した。
「あ、」
何を言えばいいのか、この少女も殺そうか。
色んな思いが頭を駆け巡る。
手に持ったナイフをさらに握りしめた。
「お兄ちゃん何してるん?」
少女の大きな目は青年を見つめるだけだった。
「ぅあ、」
口から言葉にならない音がこぼれる。
「お母さんとお父さん殺しちゃったの?」
汚れのないきれいな声が紡ぐ音は幼い少女には不釣り合いだった。
「大丈夫だよ、もう二人はいないよ」
この子は何を言うんだ、青年はそう思った。
だがそれ以上に少女の言葉は青年の何かを砕いた。
「ひぐっ」
喉が痙攣した。
涙が落ちた。
それを少女は穏やかな表情で見守る。



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