短編小説集

□赤羽業:前髪
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赤羽業:前髪…


『カルマの前髪長くなってきたねー。』

試験を前に、名前の部屋で勉強をすることになり、頬杖をついて教科書を眺めている俺に名前は言ってきた。

業「…ん?あぁ…まぁねー。」


確かに長くはなってきていたけど、また切ればいいやと、伸ばし伸ばしになってきていたことを思い出す。



『じゃぁさ!私が切ってあげるよ!』

………。


業「………は?!」

そう言うと、名前は立ち上がり、新聞紙を取ってきて床に敷くと、美容師が使用する専用のハサミとケープを準備し始めた。

業「ちょ、待ちなよ。一体そのハサミどうして…

『お姉ちゃんが美容師で1本貰ったんだー。私も前髪、このハサミで自分で切ってるんだよ。』

そう言うと名前はハサミを持ち、シャキシャキと音を鳴らして見せた。



業「ほんとに、やれんの?」



『まっかせなさーい♪上手く切ってあげるから。』

俺は渋々、用意されたケープを取り付けられると、名前と向き合うように座らされた。



『じゃ、切るね?カルマ。目閉じて?』



業「ん。」

俺はゆっくり目を閉じ、名前の動きを待った。
そっと、前髪を触れた手がひんやりとしていて、少し緊張しているのだと理解する。



次の瞬間

シャキ…

シャキ…

シャキ…

ハサミを入れられ、前髪が切り落とされていくのが分かった。

『カルマの髪色、すごく綺麗…。』

そう呟いた名前の声はとても優しく、まるで包まれるような感覚になる。



そう言う名前もすごく綺麗だよ…。


この台詞は俺の心の中にしまっておこう。いつかきちんと言えるその日まで。



〜おまけ〜

業「ねぇまだ?」

『……ちょっと切りすぎた。』

こりゃまた、オンザ眉毛にしてくれちゃってまー……。

業「…俺の髪色を褒めてくれて20ポイントあげたけど、やりすぎ、オンザ眉毛でマイナス30ポイント。今後しばらくは俺の髪かまうの禁止ね!」

『ひどっっ!!』

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