短編小説集
□赤羽業:前髪
1ページ/1ページ
赤羽業:前髪…
『カルマの前髪長くなってきたねー。』
試験を前に、名前の部屋で勉強をすることになり、頬杖をついて教科書を眺めている俺に名前は言ってきた。
業「…ん?あぁ…まぁねー。」
確かに長くはなってきていたけど、また切ればいいやと、伸ばし伸ばしになってきていたことを思い出す。
『じゃぁさ!私が切ってあげるよ!』
………。
業「………は?!」
そう言うと、名前は立ち上がり、新聞紙を取ってきて床に敷くと、美容師が使用する専用のハサミとケープを準備し始めた。
業「ちょ、待ちなよ。一体そのハサミどうして…
『お姉ちゃんが美容師で1本貰ったんだー。私も前髪、このハサミで自分で切ってるんだよ。』
そう言うと名前はハサミを持ち、シャキシャキと音を鳴らして見せた。
業「ほんとに、やれんの?」
『まっかせなさーい♪上手く切ってあげるから。』
俺は渋々、用意されたケープを取り付けられると、名前と向き合うように座らされた。
『じゃ、切るね?カルマ。目閉じて?』
業「ん。」
俺はゆっくり目を閉じ、名前の動きを待った。
そっと、前髪を触れた手がひんやりとしていて、少し緊張しているのだと理解する。
次の瞬間
シャキ…
シャキ…
シャキ…
ハサミを入れられ、前髪が切り落とされていくのが分かった。
『カルマの髪色、すごく綺麗…。』
そう呟いた名前の声はとても優しく、まるで包まれるような感覚になる。
そう言う名前もすごく綺麗だよ…。
この台詞は俺の心の中にしまっておこう。いつかきちんと言えるその日まで。
〜おまけ〜
業「ねぇまだ?」
『……ちょっと切りすぎた。』
こりゃまた、オンザ眉毛にしてくれちゃってまー……。
業「…俺の髪色を褒めてくれて20ポイントあげたけど、やりすぎ、オンザ眉毛でマイナス30ポイント。今後しばらくは俺の髪かまうの禁止ね!」
『ひどっっ!!』