短編小説集

□赤羽業:酔っ払いカルマ
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新社会人になり、数ヶ月…。

少しずつ、職場の環境にも慣れてきたころ、私はいつものように、職場から真っ直ぐ自宅マンションに向かって帰宅する。



月末近くの今日は締切である書類をいくつか片付けていたせいで、帰宅が0時を回っていた。



家に帰れば、同棲中の彼氏が待っている。自然と足取りも軽くなるのを感じた。

『ただいまぁー!』

勢いよくドアを開け、帰宅した私の目に飛び込んできたのは、玄関で靴も脱がずに玄関に倒れ込んでいるカルマの姿だった。



え…ナニコレ…。

思わず固まってしまった。


『カルマ!?どうしたの!?大丈夫!?』

我に返るとすぐに彼に駆け寄った。

抱き上げると彼から香ったお酒の匂いに、全てを理解した。




『この人…呑んでるわ……。』



抱き起こしていた手をパッと離すと、重力に従って後頭部がゴンッッと床に落ち、鳴った。




「いってぇー…ちょっと……何すんの…」

不機嫌そうなカルマ…


『あ、起きたの?おはよー』


「いたたた……タンコブできたよ。絶対できた。」




『それよりさー、そんなとこで寝てたら風邪ひくよ。部屋上がりなさいよ』




呻く彼を無視して靴を脱ぎ、部屋の奥へと進もうとしたら足首を掴まれてしまった。危うく転びそうになる。


『ちょっと何――?!』

「連れて行ってーー。」


そんな彼の手を振りほどいて肩をトンッッと蹴った。
「いッてぇ…!」と彼にしては珍しく気取らない声が上がる。


「ちょっと、さっきから酷くない?日ごろの感謝をこめて優しく介抱してくれたっていいと思うんだけど?」


『どうして私が酔っ払いにそこまでしないといけないの?私も疲れてるんですけどー。』


「俺は酔っ払いである前に、あんたの愛しの恋人なんだけどなぁ?」


その言葉を無視してまた奥へ進もうとすると、また足首を掴まれて行く手を阻まれてしまった。今度はうつ伏せになって両手でズルズルとすがりつく。
それでも歩こうとしてみるが、成人男性一人を引きずるのは重く、早々に諦めた。その場にしゃがみこむと、ようやく手を離され解放された。


『もー…分かったから。そんなに床に這ってると汚いよー?』

「掃除は名前チャンがちゃんとしてくれてますー」


…何かうざいな…。


『もう!ほら、早くベッド行こう?』

「え?ヤりたいの?なら引っ張り起こしてよ」

『バカー!酔っ払うのもいい加減にしなさい!』

柔らかそうな赤髪の後頭部を叩いたら、また「いてっ!」と悲鳴をあげた。

それが何となく可愛くて、思わず口元が緩みそうになる。腹立たしさやら、可愛さやら、愛おしさやらの感情がぐるぐる混ざり合って、思わず赤髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜた。


「何?俺が愛しくなっちゃった感じ?それならそうと口に出せばいいのに〜。名前もいい性格してるよねー。」




『……。』




…やっぱりうざい。







でも、なんか…その3倍は可愛い♪

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