短編小説集
□赤羽業:七夕の願い(死ネタ)
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七夕の願い(死ネタ)
『織姫さんと彦星さんってかわいそうだよね… 』
「はい?」
『だって、1年に1回しか逢えないんだよ?
両想いなのに一緒にいれないなんて、かわいそう… 』
「そんなもん、おとぎ話でしょ?」
『もー!カルマは夢見なさすぎなの!
いいじゃん、1年に1度の特別な日…
すごく悲しいし可愛そうだけど、でもロマンチックで…
そういうの、考えるだけでキュンキュンするでしょ? 』
「それは女の名前だけでしょ?」
そんなやり取りをしたのは、丁度3年前。
あのときは、そんな、おとぎ話があってたまるかと、8割ほど聞き流していた。
「まさか、現実になっちゃうなんてね…。」
3年前の、七夕の日を最後に、彼女は俺の前から…この世から…消えた。
「…1年に1回どころか…一生会えなくなったら七夕の意味無いでしょ…。」
ポツリと呟いた俺の頬を冷たいものが伝っていった。
名前……俺は今でも、この七夕を迎えると、思い出すよ。
名前もあっちの世界で七夕…見てるかな…?
「……会いたい…」
小さく呟いた俺の声は、優しい夜風の中に消えていった。