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□つがいで生まれ落ちる 出逢い編
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空き地に宇宙船が落ちてきたということで、真選組が調査をしなければいけなくなった。
外から見るに、その見た目は円盤型のいかにもUFOという感じで船は破損しているようだが、何が乗っているかは分からないので衝撃で死亡しているかどうかは確認してみなければ分からない。
どうやってこじ開けようか悩んでいると、中から女が出てきた。

「ゲホッゲホッ」

女は宇宙船の扉を開けると砂埃が舞っているせいか噎せた。
少し奇妙な…言い方を変えると、個性的な衣服を身につけている。
長袖の服とスカートとズボンは繋がっていてブーツを履いている。頭には大きめの帽子を斜めに被っていて、その全てが光沢感のある耐熱素材のようなもので出来ている。装飾は、半円の透明感のあるカラフルなボールのようなものが上半身に右と左でタスキがけのようになってバッテンを描いていた。
正直言うとダサい。

見た目は地球人みたいだが、天人である可能性もある。

「身分証明書を見せろ」
俺はタバコを吸いながら、女に話しかける。

「これで良いですか?」
「ああ」
必要だと思ったのか、予め手に運転免許証を持っていた。覗き込むように見る。
天人ではなくてホッとした。
空から降って来たとはいえ、事故扱いになるだろう。誰も怪我しなくて良かった。

「船は修理するので、此処に置いておいても良いですか?」
「駄目だ。此処は確かに雑草が生い茂るだけの空き地だが、所有者がいる。勝手に物を置いとくわけにはいかないんだよ」
「すぐに修理して出ますから!必要なら、土地の所有者の方に許しを貰います。早く探しに行きたいんです!」
女は冷静ながら鬼気迫る勢いで、俺に詰め寄る。

「誰を探しに行くんだ?」
「運命の人。まだ会ったこと無いんですけどね」

照れ笑いをしているが、つまり、婚活の一種か?男を探しに宇宙まで行く必要があるのかは分からないが、範囲が広がることで相手の可能性も無限に広がる…ということなんだろうか。

「そうか」
俺は納得する振りをした。

「私が思うに、人は2人対になって作られると思うんです。アダムとイブみたいに。まぁ、最初に作られたのは1人ですけどね。人は、生まれて来る時に、もう相手が決まっているんじゃないかと思うんです」
「運命の人か…俺はそうは思わねぇな」
「どうしてです?」
「もし対で作られるなら、人は付き合って別れてを繰り返したりなんかしない。結婚しているのに、浮気、不倫をしたりはしないだろうよ」
「それは運命の相手じゃなかったからですよ」
「どうやったらその“運命”というのが分かるんだ?分からないから付き合ってみて判断するんだろ。運命ってもんは自分で決めるんだよ。神様が決めたからとか、最初から決められているからその通りにしないといけないなんてことは無い。自分次第だろ」
「見たら分かりますよ…一目見たら、ビビビッて。きっと、何か感じるはず…」

涙目になりながら俯いているコイツを見て、分かった。
「恋したことないんだろ?」
だから恋に幻想を抱く。

「そう。だから探しているんです。私が恋できる相手を」

一目惚れして恋をする。それで性格も好きになることはどれだけ難しいことなのか。
俺には分からない。

「まぁ、頑張れよ。土地主にちゃんと許可貰うなら俺らはもう煩く言わねぇ」



この時の俺は、まだ知らなかった。
コイツが誰に恋するのかを。
止めていたなら、俺は傷付かずに済んだだろう。

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