実
□無防備
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キヨとの撮影が終わって、俺がキヨの部屋で編集をしていたら深夜1時をまわってしまった。
やばい、結構いい時間だ・・・。
普段の俺ならまあいいかと泊まったりするんだけど、今日はそういうわけにもいかず、名無しさんを撮影している場に招いていた。たまたまノートパソコンを持っていたこともあり、そのまま編集をしてしまい、好意に甘えてこんな時間まで待たせてしまった。
怒ってるかな・・。
静かになりたくて移動していた部屋から先ほど撮影していた部屋に戻ると、すやすやと眠る愛しい彼女とその手を握り同じく眠るキヨの姿・・・。
一瞬にして身体が震えた。ビリリとしたような感覚。言葉に表すならそう、これは嫉妬だ。
扉を開けた音でキヨは目を覚ます。
「フジ・・・終わったの?」
欠伸をしながらその手はちゃっかり俺の彼女の手を握っている
ああ。と動揺を隠すように目線を逃す
首の後ろを掻きながら、キヨはお疲れと呟くと何事もなかったようにその手を離し、ぐびぐびと飲みかけで転がっているコーラを飲み干した。
怒るのをぐっと堪えていると喉を潤したキヨが名無しさんを起こした。
目を擦りながらまだ眠そうに身体を起こす
「・・あれえ、フジ編集終わったんだぁ」
お疲れとキヨとの同じようなことを呟く
・・・怒るな、怒るな
あくまでも自然に・・・。
いつもみたいにヘラッと笑う
「ありがとう。遅くまでごめんな、キヨ
ほら、帰るぞ」
名無しさんの腕をぐっと引っ張るとキヨは首を傾げる
「泊まってけばいいじゃん。遅えし」
1時過ぎてんぞ?と問いかけられる
名無しさんは俺が怒っていると察したのか黙りだ。
「いや、女の子だし、家のひと心配するしさ。
お疲れさん。また連絡する」
相手の返事なんか待たずに、俺の荷物と名無しさんの荷物を持って、キヨの家を出た。
ずんずんと歩いていくと後ろから名無しさんが俺の動きを止めようと言葉を掛けてくる。
歩くのが早いからか歩きずらそうな名無しさんを横目で見て小さくため息をつくと、公園を指差し、寄ろうか。と呟いた
「・・・・なんでフジ・・怒ってんの?」
ブランコに乗ってしばらく経つと、無言に耐えられなかった名無しさんがボソッと呟いた。
確かに、名無しさんはどちらかと言えば握られていた側だし、よくよく考えれば、起きたのもキヨが早い。なんで怒ってるの?うん、ごもっともな質問だ
「・・キヨも男なんだよ?俺が別の部屋にいるとは言え、寝るのはちょっと無防備だとおもうんだけど」
状況を理解したのか、嫉妬かと納得してくれたみたいで、黙って下を向いた
反省しているみたいだ
「名無しさんはちょっと無防備すぎ。
寝てたとき、キヨに手握られてたんだよ?
キヨもキヨで、人の彼女の手を握っちゃうあたりさ・・・」
姑の小言のようにブツブツと呟くと名無しさんは俺の前に立ってチュッと両頬を手でおさえてキスをした
無防備
「チューしたからって許しません!」
「いや、手握られたの覚えてないからゴメンって気持ち込めたの。
あと、チューしたかったし。」
「次、こんなことしたら、泣いちゃうから!!」
「わかった、わかった、ごめんね」