素敵帽子の姉さんは…
□壱話
1ページ/1ページ
夜遅くに任務から帰った私は、倒れるようにして眠った。
_翌朝_
シャワーを済ませて着替えをしていると、ドタドタと騒がしい足音が聞こえてきた。
足音の主は私の部屋の前で止まると、何の迷いもなくドアをあけ放った。
「おい、姉貴ッ!さっさと首領のところに…」
ドカドカと中に入ってきた我が弟、中也は、しかし、私(上半身は下着だけ。下はズボンまで穿いている。)を見ると、急に黙って、来た時よりも速く出て行った。
照れた…のだろうか。
恐らく外で待っているので、ブラウスを着て外に出た。
案の定、中也は壁に背を預けて腕を組んで待っていた。
「首領のところになら、今から行くけど…?」
「そうかよ!!つか、着替えてンなら入ってくンの止めやがれ!!」
「えー。だって中也だよ?問題無いでしょ。…それとも何、照れてたの?」
「っせえな!さっさと報告に行きやがれ!」
「はいはい。じゃあ、行ってきまーす。」
早く行け、と言う割にまだ何か言っている中也を放って、私は首領の部屋へと向かった。
道中、出会った人たちから「あ、姐御、お帰りなさい!」と声をかけられ、適当に返事をしておいた。
私は一応、幹部だ。
そして、紅葉が『姐さん』と呼ばれているのに対して、私は『姐御』と呼ばれている。
首領の部屋に着くまでに沢山の人とすれ違ったが、その中に愛しい人の顔は無かった。
「__と云う訳で、敵は私の自白を信じ、首領の期待通りに動きだしました。」
「ご苦労。」
私の仕事は主に諜報活動だ。
大抵の拷問では情報を漏らさない口の堅さと、「即死モノのダメージでなければ瞬時に回復する」という能力から、ワザと捕まって情報操作をしたりもする。
今回はそれだった。
勿論、幹部と言うだけあって、体術も使えれば銃も使えるが。
「疲れただろうから、今日はできるだけ仕事は回さないようにしよう。ゆっくり休むといい。」
「ご配慮、ありがとうございます。ですが私は大丈夫ですので、仕事はします。」
そう申し出ると、首領はふむ、と考える素振りを見せた後
「よし。じゃあ、エリスちゃんの買い物について行ってよ。」
と仰った。
肯定の返事をしようとすると、それまで黙々と絵を描いていたエリス嬢がこちらへやってきて口を開いた。
「駄目よ、リンタロウ。千種はこれから太宰のところに行くんだから。」
「な、エリス嬢!?」
エリス嬢の爆弾発言に、首領は、そうなの?、という顔をなさっていた。
「いえ、決してそのような予定は…」
確かに逢いたいけど、と心の中で呟く。
「とにかく、買い物は中也の方と行くから。千種にも太宰にも仕事を回しちゃ駄目だからね!」
「エリスちゃんがそう云うなら。」
と、エリス嬢の一言で幹部三人の仕事が休みになった。