いちご牛乳の君

□5パック目
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あれから数週間後。


葵君や卯月君とは話すことが多くなった。


そして改めて気づいたことが二つある。


「卯月君って、本当にいちご牛乳が好きだよね。」
「まあなー。いちご牛乳はいいぞー。」


そう。前々から思っていたが、卯月君は常にいちご牛乳を飲んでいる。

聞いてみると好物らしい。
だからといってああもいちご牛乳ばかり飲むのは問題だと思うが。


「そういう綾ちゃんは、好きな飲み物とかあるの?」

そう聞いてきたのは葵君だ。


「んー。強いていうならブラックコーヒーかなぁ。女子らしくないと自分でも思うけど、甘いものってあんまり好きじゃないんだよね。」
「確かに女子らしくないな。」
「うわ、卯月君ってばヒドイ。」

笑っていったが、地味に傷ついた。
卯月君じゃなかったら、別に傷つかないのに…

気づいたことの二つ目は、卯月君のことが好きかもしれないということ。

気をぬけば卯月君のことばかり考えているし、卯月君の一言で一喜一憂している。
そしてなんといっても、卯月新という人のことをもっと知りたいと思う。

これはまさしく恋だろう。


けれど、相手はアイドル。
それに私になんの興味も持っていない。
だから、この気持ちは隠さないと。
隠して、そして無かったことにする。

それが一番、皆が平和になる選択だから。


卯月君への恋心を自覚したことで、余計に「私が作った曲を歌ってみてほしい」なんて言えなくなってしまった。




「綾ちゃんって、ルナPと似てるよね。」

そんな葵君の発言で、現実に引き戻された。


「え…?そうなの?」
「うん。さっきの甘いものが好きじゃない、とかさ。あと、感性というかなんというか…そういうものが似てる気がするんだよね。」


さすがアイドル、というべきだろうか。
曲を聴いて、製作者の人間性を感じ取るとは。


「そ…そうなんだ…。なんか、親近感湧いたかも?」

誤魔化し…きれただろうか。

私って隠すの下手だからなあ。


「ホント!?じゃあ、今度曲聴いてみて!」
「う、うん。じゃあ、お薦め教えて?」
「うん。あ、LINEのID交換しよ!夜にお薦めのURL送るからさ!」
「オッケー。」



葵君が嬉しそうに言ったのを聴いて、誤魔化せたことを確信した。

って、なんだかんだでLINEとか交換しちゃう流れになったんですけど!?



自分のIDをメモに書いている間に気づいたが、卯月君からの視線が痛い。
卯月君には感づかれてしまっただろうか?
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