いちご牛乳の君

□4パック目
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そしてあっという間に授業も終わり、放課後。
家に帰ってひと段落したところで、チャイムが鳴った。

もちろん涙が来たわけで。


涙をリビングに通し、紅茶を淹れ、クッキーを出した。

涙は美味しそうに食べてくれている。

これだからもっと色々と作りたくなる私は、甘すぎるだろうか?


「…美味しい。綾姉、ありがとう。」
「もう少し表情に出そうか。」

私には涙の表情の些細な変化が分かるが、きっと他の人は分からないだろう。


「いっぱい作っちゃったから、寮に持って帰る?」
「うん。いっくんたちと食べる。」
「じゃあ、後で用意するね。あ、そうそう。」

作りすぎたクッキーの処遇が決定したところで、かねてから話そうと思っていた「卯月君とクラスメートになった件」について切り出す。


「私ね、卯月君と皐月君とクラスが一緒なんだ。」
「おめでとう?」

何故か首を傾げて反応に困る涙。


「これで新の曲が作れるね。…そういえば、葵がルナの曲好きだって言ってた。」
「そうらしいね。でも、まだ私がルナだって言ってないから、涙も言っちゃだめだよ?」
「うん。」
「あと、今はまだ卯月君の曲は…」
「何で?」
「なんていうか、今まで散々、夢に見てたけど、いざ本人を前にすると恥ずかしいっていうか…」
「そうなの?」


ああ、本当、自分のチキンさ加減には若干、腹が立つ。

だけど、本当になんだか恥ずかしくて言い出せないんです。

葵君にも、ちょっと…


「あ、涙の方からも用があったんじゃないの?」
分が悪くなったので、あっさり話を変えた私←

「うん。勉強、教えて?」

なるほど、そういうことか。
私は今までも、定期的に涙に勉強を教えていた。

最近は涙が忙しくてできていなかったからなあ。


「いいよ。どこ?」
「えっと、ここ。」


それから夕方まで、途中で休憩を挿みつつ、涙の勉強の面倒を見た。
これからも忙しいことを見越して、予習もした。



「今日はもう帰ったほうがいいかな。」
日が暮れかかった空を見て、私は言った。

「じゃあ、そうする。」
「クッキーの用意してくるから、その間に帰る用意しておいて。」
「うん。」


涙の返事を聞いて、私はキッチンに向かった。
適当なタッパーにクッキーを詰める。




クッキーを詰め終えてリビングに戻ると、涙も帰る用意ができていた。


玄関まで見送る。


「綾姉、今日はありがとう。」
「いえいえ。またいつでも来てね。はい、これ、クッキー。」
「ありがとう。バイバイ。」
「バイバイ。」
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