いちご牛乳の君

□3パック目
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そして涙をもてなすために買い物をして、帰宅。

何を作ろうか、と考えて、結局クッキーに決めた。
季節的にも作り置きしておいて問題ないだろうからね。


クッキーの用意を終え、ピアノを弾く。

音楽教師の家なだけあって、ちゃんとグランドピアノが置いてある。

一時間程ピアノを弾いてから、晩御飯の用意に取り掛かる。
一応、家事はできるからね?
ちなみに今晩は焼き魚です。

魚が焼け、ご飯が炊けたタイミングで亜紀姉が帰ってきた。
まあ、そうなるようにタイミング合わせたんだけどさ?

「ただいまー。あ、今日は魚かー。」
「ん、お帰りー。そうだよー。てなわけで早くご飯にしよ。」
「んー」

え、私も亜紀姉も学校にいる時とキャラが違うって?
ふつうじゃない?
みんなそんなもんでしょ。


とか言ってるうちに亜紀姉は着替えなどを終えて食卓についた。


「「いただきます。」」

そう言って、他愛もない会話とともに食事を始めた。


「あ、そう言えば、明日、涙が家に来るって。」
「そうなの?また急だなー。まあ、涙らしいか。」
「だね。」

笑いあったところで、忘れていたことを思い出した。

「亜紀姉…」
「な…何かな?」
私の声にただならぬ物を感じたのか、亜紀姉は恐る恐る返事をした。

「音楽の時間、何で私にピアノ弾かせたの!?」
「え、だって綾の方がピアノ上手いし、みんなと仲良くなるキッカケになるかなと思って。それに…」

亜紀姉はニヤニヤしながら後を続けた。

「卯月君へのアピールにもなるでしょー?」
「何のアピールよ!あと、仲良くなるキッカケになったのは事実だけど、あんまり目立ちたくなかったんだけど!?大体、私がピアノを弾いたところで、卯月君は何も思わないわ!」
「ほほう。流石、卯月君のことよく見てるねー」
「別にそんなんじゃっ…」
「これはいよいよ、歌声だけじゃなく本人に惚れたかー?」
「いや、だからそんなんじゃ…」
「ほんとかー?」

一度こうなってしまうと亜紀姉はウザい。

亜紀姉はああ言うけれど、私は断じて卯月君をそんな風に考えたことない。


ひとしきり私を弄ったら、亜紀姉は満足したようで、急に冷めた顔をして話題を変えた。

「はー。まあ、いいや。とりあえず、これからも伴奏頼んじゃうからねー。」
「いや、何で?自分でできるでしょうに…」
「だからー綾の方がピアノ上手いし、一回やったからいいでしょ?」
「…はいはい。」

結局、こういう時に折れるのは私だ。

「いいの?やったー!」
純粋に喜ぶ亜紀姉は、大人なのか子供なのか分からなかった。
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