いちご牛乳の君

□1パック目
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_四月_


新学期が始まる今日、私は従姉が務める学校に転校した。

高三にもなって転校した理由は、両親が海外転勤することになったからだ。

一人でも問題ないと主張したが、受け入れてもらえず、従姉と同居することになった。



始業式で紹介され、言われた教室に向かう。


ガラガラ、と扉を開けたところで、私は固まってしまった。

理由は簡単、クラスメートの中に卯月新と皐月葵の顔を見つけたからだ。

しかも、最初は男女混合の出席番号順に座るので、見事に卯月君の後ろ、皐月君の左隣りが私の席だ。


転校生への好奇の視線を受けながら席に着くと、皐月君がさっそく話しかけてきた。


「転校生だよね?俺は皐月葵。よろしくね。」
「香月綾です。よろしく。」
「分からない事があったら聞いてね。」
「ありがとう」
「ほら。新も。」

皐月君にそう言われて、卯月君は気怠そう、というか眠たそうにこちらを振り返った。
「おー。俺は卯月新。よろしくなー香月。」
「よろしく。」



二人の自己紹介が終わった後は、待ってましたといわんばかりに他のクラスメートに囲まれて、質問攻めにあった。


担任が来てみんなから解放され、HRが始まり、改めて自己紹介をしたりした。

一応仲良くやれそうである。




そんなこんなで授業が始まりだし、今から音楽、つまり従姉の亜紀姉の授業だ。


シラバスが配られて授業内容の説明が終わり、さっそく授業に入ることになった。

まずは歌からなのだが、亜紀姉がとんでもないことを言い出した。

「じゃあ、香月さん。ピアノ弾いてもらえる?」
「いや、あの、先生?」
「だめ?」

まっすぐ目を見てあんな顔されては、誰も断れまい。

「分かりました。」


ということで、ピアノの前に座り、楽譜を一度読む。


「じゃあ、まずは先生が歌うから。」

亜紀姉の準備ができたので、弾き始める。

亜紀姉は歌が上手いなあ、なんて伴奏しながら思う。

亜紀姉が歌い終わり、今度はメロディーラインを弾くよう言われる。


耳がいいので、ピアノを弾きながら一人一人の歌声を聞き分ける。




ああ、やっぱり卯月君の声はいいな。





私には水無月涙という幼馴染がいて、彼はアイドルをやっている。

涙の応援をしているうちに、彼が所属するアイドルユニット、Procellarumの兄弟ユニット、Six Gravityの曲を聴く機会があった。


その時に卯月君の歌を聞いたのだが、そこから彼の歌の虜になった。

今では、涙だけでなく卯月君のCDも全部持っている。


そして、自分が作った曲を卯月君に歌ってもらう、というのが今の私の夢だ。

そんな私が、自分が卯月君のクラスメイトだと知って、平常心を保てるわけがないでしょう?   
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