文豪ストレイドッグス365

□バレンタイン チョコを渡そう_ポートマフィア編_
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2月14日、朝。

私、島崎馨は、誰かが寝室の扉を開ける気配で目が覚めた。

私が起きないように極力気配を消している心算らしいが、バレバレだ。

まあ、特に損害は無い……寧ろ益なので、寝たふりをしておこう。




気配の主はそのまま寝ている(フリ)私のところまでやって来て……わっと飛びついてきた。

「おはようございます、お嬢様。Qもおはよう。」
「「おはよう!!」」

ベッドから起き上がった私に、二人は何かを期待するような眼を向けてきた。


「お姉ちゃん。今日はバレンタイン日なんでしょ?チョコを貰える日なんだよね?お姉ちゃん、僕にチョコくれる?」
純粋な目でこちらを見てそんなことを言うQ。

「勿論、ちゃんと用意してるで。」

「じゃあ、私の分は?」
エリス嬢までそんなことを聞いてくる。

「ちゃんとありますよ。取ってくるので、待っていてください。」

二人に待ってもらって、昨日のうちに用意したチョコの山から、二人のものを探し出す。
案外、早く見つかった。



「おまたせしました。こちらがお嬢様の分です。」
「わーありがとう!」
「で、こっちがQの。」
「わーい!ありがとう!」

チョコを渡すと、二人は嬉しそうに他所へ行った。

微妙にバレンタインがハロウィンとごっちゃになっている気がしたのは気のせいだろうか…。




それは兎も角、今日はチョコを配らねばならない。





早速、着替えてチョコの用意をする。



幹部にチョコを配りがてら、逢った一般構成員にはチョコクッキーをあげる、という方針にしようと思う。

ちなみに、チョコもクッキーも手作りだ。




先ずは……やつがれ君のところに行こう。


そう思い、近くにいた部下に芥川の居場所を訊ねる。
勿論、クッキーを渡すことも忘れない。



訊きだした場所に行ってみると、いつも通りの芥川と、ドヤ顔の梶井、そして泣きそうな顔をしたいっちゃんこと樋口一葉がいた。


「……これ、どういう状況?」
「「「島崎/馨さん!」」」
「まあええわ。はい、梶井といっちゃんはこっちな。で、芥川にはこれ。」

そう言って、梶井といっちゃんにクッキーを、芥川にチョコを渡す。
が、素直に受け取る梶井といっちゃんとは対照的に、芥川は渋って受け取らない。

仕方がないので上司命令だと言ったら受け取ってくれた。



さて…次は紅葉のところに行くか。



私が見つけた時、紅葉はお嬢様にチョコを渡していた。

先に私に気づいた紅葉が、声をかけてくる。

「おお、馨。ほれ、私からのバレンタインチョコじゃ。」
「ありがとう。はい、これ、私から。」
「ありがとう。」


ふとあることに思い至ったので、私たちのやり取りを見ていたお嬢様に訪ねてみる。

「ところでお嬢様。バレンタインがどういう日か、ご存じですか?」
「チョコを貰える日でしょ?」


何の迷いもないお嬢様の答えに、紅葉と顔を見合わせる。


「正しくは、女の子がチョコを渡す日ですよ。」
「そうなの?」
「はい。なので、お嬢様も首領にチョコを渡してみては如何でしょう?」



私の提案に、お嬢様は一寸考えた後了承した。



「…でも、どんなチョコ渡したらいいと思う?」
「そうですね。時間はまだ有るので、私と一緒に作りますか?」
「そうする!!」



そんな訳で、お嬢様と一緒にチョコを作った。

冷やし始めた時間からして、夕方には出来上がるだろう。



チョコができるまでの間、まだ渡していない人にチョコを配りつつ仕事をする。






























そして、夕方。


お嬢様たっての希望で、二人で首領にチョコを渡しに行った。


首領はお嬢様からチョコを貰えて、泣いて喜んでいた。


目でよくやったと伝えてくる首領に一礼し、部屋を出る。




ところで皆さん。
私には、まだ皆さんに云っていないことがある。



今日一日、やたらと私の周りをウロウロしている人がいるのだ。

一度や二度逢っただけならまだしも、行く先々で私の近くにるので、私を追いかけてきているのに間違いないと思う。



まあ、どういう要件で彼が私の周りをウロウロしてるのか、分かった上で遊んでいる私なのだが。

そろそろ声を掛けてもいい頃合いだろう。




「ストーカーか、中也は。」
「違うわ!!」
「じゃあ何よ。」
「馨。手前、今日が何の日か知ってるか?」
「さあ?」
「バレンタインだよ!」
「ああ。」
「…姐さんはチョコレイトくれたぜ。」
「ふーん。」
「……手前からは…無ぇのかよ?」

あ。ヤバい。
面白い。そして可愛い。

「あははははは!」
「ちょっ笑うな!!」

「……ごめんごめん。ちゃんと中也の分もあるで。」

そう言うと、安心した様子の中也。


次の瞬間、彼の口は弧を描いていた。

「いいウイスキーがあるんだ。一寸付き合えよ。」





どうやら、今年は素敵なバレンタインを過ごせそうだ。

FIN
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