文豪ストレイドッグス365
□バレンタイン チョコを渡そう_探偵社編_
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2月14日、バレンタイン。
私、島崎馨は同僚に猪口冷糖チョコレイトを配ろうと思います。
そんな訳でいつもより早く出社した私は、まだ誰も来ていない社内で、チョコを確認していた。
_どれを誰に渡すか_
昨晩から幾度となくしている確認作業が一通り終わったところで、誰かが階段を上ってくる音がした。
この音は……。
音の主は、先に来ていた私を見つけると、一寸驚いた顔をしたが、直ぐにいつもの表情に戻った。
「お早う、馨。今日はいつもより早いな。」
「おはようございます、社長。今日はバレンタインですから、早めに来て準備してました。社長には、これです。」
チョコを渡すと、社長は茶請けにすると云って受け取ってくれた。
と、次は国木田が出社してきた。
「おはようございます、社長。島崎も今日は早いな。」
「おはよう国木田。今日は色々あるからな。…っと。はい、どうぞ。」
「む…チョコレイト?……ああ、そうか。今日は聖バレンタイン日か。ありがとう。……ちなみにこれは義理……」
国木田らしい反応を、一人の声が遮った。
「野暮なこと聞くんじゃないよ、国木田ァ。」
晶子だ。
「与謝野先生!」
「おー。おはよう晶子。はい、ハッピーバレンタイン!」
「おや。嬉しいねぇ。妾からも、はい。」
「わー。ありがとう!」
私はいつもこの三人の後に出社するので、他の社員が何時頃来るかは大体分かる。
そろそろ__
そう思った矢先、会話が聞こえてきた。
「もう!お兄様ったら。ナオミの愛が受け取れないというの?」
「いや、そういう訳じゃ……」
「だったら!」
「でもね、ナオミ。あれは……」
「お・兄・様?」
「ひいっ」
「二人ともおはよう。」
ツッコミどころ満載な二人に、敢えて普通に声をかける。
「おはようございます、島崎さん。」
「おはようございます、馨さん。」
「二人にチョコ用意したんやけど……。潤一郎君はやめといた方が良かった?」
もしかしたらナオミちゃんに何か言われているのでは、ということに思い当たったので訊いてみたが、ナオミちゃんからOKが出た。
「ほな、どうぞ。」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます。私からもどうぞ。」
「ありがとう。」
そろそろ賢治君が来る頃かな。
そう思って準備をしていると、賢治君は敦君と鏡花ちゃんと三人で来た。
「おはようございまーす。見てください!来る途中でこんなに沢山チョコレイトをもらっちゃいました!」
そう言った賢治君に続いて、こくこくと首を縦に振る二人。
確かに、三人は腕いっぱいにチョコを抱えている。
「今日はそういう日やからな。私からも、はい。」
「わーありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「……ありがとう。」
そして、三人は口を揃えて私に質問した。
「そういう日って何ですか?」と。
「今日はバレンタインって云ってな。………」
と、途中でナオミちゃんや晶子もまざりつつ、バレンタインとは何かを説明する。
「なるほどー」
「世の中にはそのような日が……」
「私も……」
説明が終わって、三者三様のリアクションをしたところで、勢い良く扉が開いた。
「おっはよーう!今日はバレンタインだね。ところで、馨ちゃん。当然、乱歩さんにチョコを用意してきたよね?」
「おはようございます、乱歩さん。はい、どうぞ。」
チョコを渡すと、乱歩さんは宜しいと言って満足そうな顔で仕事机に向かった。
始業時間ギリギリに、彼はやって来た。
チョコを貰いすぎて疲れたと自慢する彼に、国木田が説教を始める。
私はそれを遮って太宰にチョコを渡した。
「疲れてるとこ悪いけど、私からも、ハッピーバレンタイン。」
太宰は一瞬だけ意外そうな顔をしたが、笑って受け取ってくれた。
これで、今朝のミッションはコンプリート。
FIN