いちご牛乳の君
□3パック目
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そして次の日。
涙が来るということで機嫌よく登校すると、皐月君が問題集と難しい顔でにらめっこしていた。
が、私を見つけて顔を上げた。
「おはよう、香月さん。」
「おはよう、皐月君。卯月君は一緒じゃないんだね。」
そう。卯月君はまだ来ていないのだ。
てっきり毎日一緒に登校しているものと思っていたのだが。
「ああ。新は今日は仕事なんだ。」
「あ、そうか。それは学校に来れないね。」
クラスメートになったことで、私の中で卯月君や皐月君のイメージが変わってきている。
卯月君は、ミステリアスでクールな人なのかと思っていた。
が、実際はマイペースな人だった。
あと、割とOSだったり。
皐月君は、王子様キャラだという印象があったが、実際は、王子ではあるのだけれど、どこか乙女っぽかったりした。
そんな風に少しプライベートを知ってしまったので、二人がアイドルだということを失念していた。
だからか、仕事という可能性を忘れていた。
「で、皐月君は何してるの?」
もう一つ、気になったので訊いた。
「えっと。ここが分からなくて…。」
と、見せてもらうと数学だった。
勉強はできるので、皐月君が分からないと言った問題も分かった。
「ああ。これはね…」
解き方を説明する。
「なるほど、ありがとう。香月さん。」
「どういたしまして。」
「また聞くかも。」
「いいよ。」
「ありがとう。香月さん。…いや、綾ちゃんって呼んでいい?」
皐月君からの申し出は唐突だった。
けれど、答えは決まっている。
「いいよ。」
「じゃあ、俺のことは葵ね。」
「うん。」
「ところで、何かいいことでもあったの?」
と、いきなり葵君が訊いてきた。
「え?…まあ、放課後、いいことがあるって感じかな。何で分かったの?」
「嬉しそうな顔してるから。」
どうやら顔にでていたらしい。
「あー顔に出てたかー。」
「うん。それはもうバッチリ。」
葵君のその言葉に二人で顔を見合わせて笑ったところで、チャイムが鳴った。
授業はあっという間に終わった。