ゲーム沿い

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「あなたが巣の上を通っている時に別の通路からここに案内したの。今まで見ていた所は丁度死角になっていたから気が付けなくて不思議じゃないわよ」

パンジーさんの説明にようやく納得がいった。チャレンジャーが通る道をジムリーダーまで毎日行き来するのは大変だ。関係者用の通路があったとしてもなにも不思議ではない。

隠れて見ていたことを恥じるように、申し訳なさそうな表情で話しだす姿は何だか少女のようだった。

「ごめんなさい。隠れてなんてあんまりよくないおこないよね」

でも、例えそうだとしてもわたしにとっては些細な事だった。
それよりもあなたが見守ってくれていたことが嬉しくて混乱から抜け出したわたしはどうかあなたの表情が晴れますようにと願いを込めて言葉を唇に乗せる。

「いいえ。カルネさんに応援してもらえていたなんてとても嬉しいです。あの、どうでしたか?」

バトルと口にしなくてもまるで呼吸をするように人の思いを読むことに長けたこの人は当然のようにその言葉の続きを紡いでみせる。

「とっても良かったわ。あたしまでうずうずしちゃったもの」

勝利を自分のことのように喜んでくれていることが伝わってくる。
ああ、良かった。問いかけてから答えが言われるまでひそめてしまった呼吸の分、深く息を吐いた。

「あなたの思いに答えたサーナイト。答えたいと思わせたチセちゃん。トレーナーとポケモンが同じ目線に立てた時、それはとてつもない力に変わるのよ。
サーナイトにとってあなたは十分頼れる存在なの。じゃなきゃあなたの指示を聞くなんてことはないし、進化なんてできないわ。トレーナーとボールと言う絆で繋がれたポケモンは皆一様に、自分のトレーナーの力になりたくて進化を望むんだから」

それは驚愕と、困惑と、有り余るほどの高揚をもってきた。
サーナイトにとってわたしは頼れる存在になれていた。でも一体いつから?

カルネさんが断言する言葉を疑うなんてことはしない。それ以上にわたしがなりたいと掲げていた目標をもっとも大好きな存在によって確立されたことに泣き出してしまいそうなほど嬉しかった。

「サーナイト、わたしあなたのことが大好きだよ。あなたの側にわたしは居たい」

この子達がいれば、わたしのことを思ってくれている誰かがいれば他には何もいらない。
それだけで充分だ。

だからわたしは心を決めた。


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