ゲーム沿い
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「さて、まずは君の名前を聞いていいかな」
目の前に座るプラターヌと名乗った博士が柔和な笑みを浮かべる
受け取ったカップを握りしめたまま「チセです」と答えた
「チセくんか、いい名前だね。ようやく君を名前で呼ぶことが出来るよ」
とあまりに優しく微笑まれれば固まっていた心が解きほぐされていくようだった
「聞きたいことは色々あるんだけどチセくん君はどこから来たのかな」
心がざらりと撫でられる感覚。なんと言えばいいのか分からなくてつっかえた言葉の続きを見つけるまでに時間を要した
「分かりません。気が付いたらあの場所にいて…それにそのキルリアと呼んでいるその子は一体何なんですか?」
チラリと視線を向ければそれに釣られるように二人の視線も動いた
「わたしはキルリアという名前をあなた達の口から聞くまで知りませんでした。ここがどこなのかも…分かりません」
この場所が研究所であるという事にではない
あの花畑も含めて、この生き物も含めて目にしたことがないこと、聞いたことがないことが溢れかえっているこの世界自体がわたしには怖くて、なにも分からない
「どう説明すればいいのか…わたしにもよく分からなくて、でも嘘はついていません。信じてください」
情けなかった。自分の名前以外に具体的に話せることはなくて膨らんでいく絶望に勝手に呑みこまれてしまう
沈んでいく心があった。どこまでもどこまでも、自分だけが深く暗い方へと引きずられる感覚の中に身を置いている
どうしようもないほど不安で、これからどうすればいいんだろう
重ねる手に力を込めてしまう。そうしなければ視界が滲んでそれが溢れるのを止められそうになかった