short story

□泡は沈む(トウヤ)
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※夢主目線


幼馴染のトウヤはいつだってわたしには追いつけない存在だった


幼い頃からわたしはいつも一歩遅くてトウヤは振り向いてその手を伸ばして待っていてくれるそんな距離




でも、このままじゃいけないって思ったから。変わりたいって思ったから、おずおずと踏みだしたわたしの背中を押してくれたのはやっぱりあなた




知ってる?いろんな人と仲良くなりたいなっていう願いはあったけど人と話すのが苦手だったの

今でこそ何の躊躇もなくポケモンに触れ合えるけど初めてポケモンを実際に目にしたとき画面越しに抱いた感情とは全く違うものが自分の中に生まれたの

それは恐怖で、トウヤやトウコ、ベルやチェレン。わたし以外のみんなが喜々として触れ合っているのに怖くて側で見ていることしかできなかったのを

決して手を伸ばしてその体温に触れようとしなかったのを…




そんなことが嫌で、情けなくて、悔しくて、不の感情ばかりだったけれどそれでもトウヤの隣に並べるようになりたくて、自分を好きになりたくて、ポケモンに抱いた好きという感情を嘘なんかにしたくなかった

そうした様々なものを内に秘めて今のわたしがいた






二つ年下のキョウヘイくんとメイちゃん、そのお兄さん的な存在のヒュウくん

かけがえのない大好きと心から伝えられるポケモン達

時間はかかったけれど回って集めたきらめくバッチ。それを授けてくれたジムリーダーさん達

そして四天王の人達。その人達を束ねるチャンピオンのトウヤ




最後に行き着く終着点にいつもトウヤがいた。特別で憧れで、でもちょっぴり寂しい

トウヤはとうとうわたしが手を伸ばしても届かないところまで行ってしまったのだ



でも

「トウヤ」


名前を呼べばにこりと穏やかに笑って手を振り返してくれる。そんなことだけでわたしは幸せになれた

忙しいのはチャンピオンだから。そう分かってはいてもこうやってまた会いたいな、なんて自分勝手な思いだけが積もっていく

…時が止まればいいのに。この心地よい時間の中にずっと身を置いていられればいいのに




口に出せない言葉を飲み込んで心の奥底ばかりに溜まっていく。そんな風に一人考えに耽ってしまったからだろう。ドンっと背中にかかる急な重みに耐えきれずこけそうなってしまった


支えてくれたキョウヘイくんにお礼を言って、しょんぼりとするトウコに言葉を重ねる

こうやって人とかかわれるようになって前よりもずっとすんなり自分を出せるようになった

だから、キュッと握られた手に驚いたものの嬉しさが勝って言葉にできない思いの分。その手に力を込めた


きっとこれは頑張った自分に神様がくれたひと時のご褒美なのではないかと密かに思いながら

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