short story

□泡は浮かぶ(トウヤ)
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幼馴染のナマエは誰にでも好かれる女の子だった。それはポケモンも人にも…



「あっトウヤ。こっちだよ!」


カフェの一角、一つのテーブルを囲んでいる中でスッと立ち上がって手を上げて呼んだナマエを見て手をふり返した


肩口で切り揃えられた髪が風を孕んで揺れて、暖かな陽光を映す澄んだ瞳がやわらかく細められるのを見ればあまりにも簡単に胸の音が大きくなって甘い気持ちで一杯になる


だからつい緩みきった顔を見られたくなくて癖で帽子のつばをいじってしまう


僕が来たのを皮切りに今日行く予定だったライモンシティの遊園地へと移動を始める




「なに変な顔してんのよ」

「別に」


隣を歩く双子の姉であるトウコはずいっと僕の顔を覗き込んで呟いた。そっけなく返せば前を歩く三人を見てからにやっと笑った


「ナマエを二人占めされて焼いてるのね」


的を射た言葉に一瞬ドキッとした。それがしっかりばれていたようでまるで見せつけるように「ナマエー」と呼んで後ろから抱き着く姿を見せられれば

駆け寄ってべりっと離していた




「トウヤ?」

「…トウコ、重かったでしょ」

「ちょ、女の子に向かって失礼でしょ!

もう、なんか言ってよ。メイ、キョウヘイ」

「あはは」

「まあまあ、実際にナマエさんがこけそうになったのは事実ですし」



ほらみろ。むぅ、としながらもごめんねと言って謝るトウコ。「次は受け止めるから」と手を取って和の中に入れてしまう

いつだって人の手を取ってその温かで心地よい場所の中にいれてしまう


ふいっと僕の方に顔だけ向けて口パクで「ありがとう」と言われればまた口元が緩んでしまう



意地悪な所なんてなくて素直でまっすぐなところに惹かれて、癒されてそしてもっと傍に居たいと思ってしまう




「トウヤ先輩、早く行きましょ」

「うん」



ああ、でも…


「ナマエさん、今度相談に乗ってもらいたいことがあるんですけど二人きりで会えませんか」

「え、うんわたしでよければ」

「やった!」




チラリと向けられたのは無邪気とは違うピリッとした刺激のあるものだ。でもその中にちらつく焦りも見抜いた

ふーん。そんな顔ができるようになったんだと思えど不思議と焦りはわいてこなかった。するりと隣に並んで手を握れば驚いたように強張る手

ぎゅっと力を入れれば徐々に力が抜けて遠慮がちに指先まで絡まる感触に受け入れてもらえたと満たされる喜び

そっとこっちを見てはにかんだような、昔から変わらない笑みがあって、もうそのままナマエの細い体を抱きしめてしまおうとして、じぃと見つめてくる視線に思いとどまった

でも、ナマエは自分のものだと見せつけるようにキョウヘイが見せたものとは違う余裕を含んだ笑みを浮かべた

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