short story

□一瞬の交差(キョウヘイ)
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わたしの想いはどこまで行っても平行線で決して交わることはない…一瞬でも




「久しぶり!ナマエ」

「あっキョウヘイくん。元気そうで良かった」


久しぶりに故郷であるヒオウギシティに帰っていたわたしは偶然同じように帰ってきていたキョウヘイくんと再会した


数か月前にバトルをした日の光景が瞼の裏に浮かぶ。勝たせてあげたかったなぁっと少しだけ苦い思いを飲み込んで隣に並んだ


あれっと感じた微かな違和感。ふっと横に視線を向ければ違和感が確信へと変わる


「キョウヘイくん背伸びたんだね」


とんっと止まる歩みにわたしは頭の上に手を置いてそのまま横に伸ばせば当たったのは肩と同じくらいの位置



「前までは肩より上だったのに…」

「そう?ってなんで残念そうなの!」

「わたしの成長期は終わったかもしれないのにどこまで伸びちゃうの」

「まぁまぁ、ほら女の子は小さいほうが可愛いって言うよ」


苦笑を浮かべて大きな手がわたしの頭を撫でる優しい感触が沈んだ心の中からすくい上げるようでその変化は自然に浮かべることが出来た笑みが示していた


…ああ、終わっちゃった


離れていく手をただ黙って見る。その手を追えばキョウヘイくんと視線が交わって透明な瞳の中にはわたしが映っていた


「ねえ、またバトルしない?」

「いいけど、わたしでいいの」


会うたびにバトルをするのはもう決まりごとになっていた

六対六のバトル。キョウヘイくんはみるみるうちに強くなってわたしの負けが続いている


「だってナマエとのバトルが一番楽しいからさ」

「…ありがとう。わたしもキョウヘイくんとのバトル、好きだよ」



わたしはバトルだけの一番。あなたの特別にはどうしたってなれない


友好的な笑顔も声も行動も、ふと視界に入った薄桃色の花のようにふんわりとした髪が揺れるあの女の子にはわたしでは決して引き出せない甘さが含まれているのだろう


悔しいな、悲しいな


こんなに好きなのに、想いは一方通行でその行く先にいるのは、隣に並んでいるのはあの子

その内こうしてバトルをすることもなくなってしまうのだろうか


そう思えば胸が張り裂けてしまいそうだ。バトルの時に感じる苦さよりもずっと濃くて、重くて、飲み込めないほどの感情や言葉が気を抜いたら溢れてしまいそう


「ナマエ?…大丈夫。具合悪い」

「…キョウヘイくん…ううん。大丈夫だよ」


ちゃんと笑えているだろうか。力なく上げた口角も、大丈夫だと紡いだ言葉もちゃんと違和感なくいつもどうりを作れているだろうか


どうか一瞬でもいいの。一瞬でもいいからこの先もあなたの中からわたしを消さないで

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