short story

□時雨心地(リーリエ)
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※ナッシーアイランドでの雨宿り


「少し濡れちゃったね」


ポンポンと髪をタオルで拭きながらこちらに話しかけてくるナマエさん


「そうですね。ここまで来たのにちょっとついていないみたいです」


それは半分嘘だ。本当はこうやって二人でいる時間が増えて嬉しいな。なんていう部分は恥ずかしくて口にできそうにない




ナマエさんと初めて出会ったのはマハロさんどうのつり橋で動けなくなってしまったほしぐもちゃんを助けてもらった時だった

どうしていいか分からない私に安心させるように微笑んでからつり橋を渡ってほしぐもちゃんをオニスズメから守ってくれて…




今思えばほしぐもちゃんが私とナマエさんを出会わせてくれたのかもしれない。出会ったばかりの頃は私より少し背が低くて華奢でお日さまのような温かな笑みを浮かべる女の子だとしか思っていなかった





少し前からククイ博士の助手になってこの土地の知識を持っていた私は少しお姉さんのような心持で私が教えてあげなくてはと自分が知っていることを惜しみなく教えてあげた


街の名前から施設までそして案内。カントーから引っ越してきたばかりだったからか見るもの全てにキラキラとした眼差しを向けて楽しそうにしている様子を隣で見ているだけで不思議と私まで元気をもらっているみたいだった





少しだけこの地方のことを知っていて、少しだけ前を歩いているように思っていたのは本当に僅かな間だった。アシマリさんを貰ってハウさんとのポケモンバトルを見てポケモンが傷ついているのに可哀想と思うよりも笑顔を浮かべているトレーナーとポケモン。少し会わないでいる間、目まぐるしいほどの成長を遂げていたナマエさん



気が付いた時には知らないことを教えてあげる立場から私も教えられて、守られている立場になっていた




ポケモントレーナーでない私がほしぐもちゃんのために出来ることはあまりないけれど力を貸してくれて応援してくれる大切な友達の一人だった




そしていつからか当たり前のように何かあったら一番に助けに来てくれるのはナマエさんで、母様と対面した時も扉を開けて駆け込んできた貴方の姿を見た瞬間、胸の中にあったどうしようもないほどの大きな不安は和らいで安堵感からか熱いものがこみ上げてきたのを覚えている



母様の言葉はあまりにも簡単に心に傷を残した

ぐさりと一つ一つ確実に痕を残す冷たい言葉。それは私が母様にとって間違いを犯したから、私があなたから与えられる愛情から逃げ出したから…挙げればきりがない自分がした数々の行動





でもそれは間違っていないと心から思えるのは他の誰でもない隣に居るナマエさんの言葉があったからだ


「リーリエはコスモッグを、あの子たちを助けるために体を張って守ったんでしょ。それはリーリエにしかできない、貴方にしかない強さだよ

わたしはポケモンたちに守ってもらうことしかできないし、この子達の力を借りないと誰かを守ることすらできない

だから…その強さが羨ましい。でもそんな頑張ってるリーリエだから皆きっと助けてあげたいって思うんだよ

リーリエが思うその気持ち一つ一つに間違いなんてないよ」




新しい自分になった朝、漆黒のまっすぐな瞳が向けられて、告げられた言葉が勇気をくれた




貴方が言葉をくれるたびにやわらかな光になって暗闇にいる私を照らしてくれた

いつの間にか私の手を引いて引っ張ってくれた。でも今度は少しずつでもいいからもう一度貴方の隣に立てる自分になりたいと、いつか貴方のようなトレーナーになって素敵なポケモン達と出会って色々なことを教わりたいなって




これから何が起こるのか分からなくて不安でいっぱいになることが何度あっても



「まだ島巡りを終えて何をしたいかは決めてないの。でも決まったら一番にリーリエに報告するね。わたしの目標をリーリエに聞いてほしいな」





貴方の中で私が特別な存在であれるというだけで不安も悲しみも晴れていってしまう


貴方は私にとっての太陽でその光を受けることが出来る月になれればいいな

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