short story

□手のひらごしの魔法(ダイゴ)
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カァンと規則的になり続ける音

土の匂いが空気に混じるこの空間にいるのは僕と手伝いをしてくれているポケモン達だけだった



メタングが掘っている場所にふわりとカンテラの光を当ててくれる。いくらフラッシュで明るくなっているとはいえどうしても陰になってしまいがちな手元



「ありがとう」とお礼を言って掘り出したばかりの石を見つめると、傍にいたココドラも真似して見つめてくる





石は人と違って決して言葉を話したりしない、ただ長い年月を静かに土の中で佇み、その美しい煌めきで心を浄化してくれる

1つとして同じ色、同じ形がないそれは人と同じようにも感じられるが人はこんなにも透き通ってはいないし、いつまでもきらめきを保っていることなど不可能なのだから

人は感情を持ち、上辺だけで思ってもいないことを呼吸をするように簡単に言えてしまう。いくらでも言葉という手段を使って取り繕うことが出来てしまう
嫉妬や、下心、少しでも自分の立場を有利にするためにつく嘘、そんなものばかりが渦巻く世界に身を置いている僕の心はいつの間にか荒んでいたのかもしれない








「ダイゴさん?」


この場に似つかわしくない澄んだ声が響く



「やぁ、ナマエちゃん」

「あ、やっぱり。こんにちはダイゴさん」


肩につくほどのしっとりと濡れたような黒髪は薄暗い中でも光を宿し、真っ白な首や肩の上にさらさらとこぼれる

身に纏っているスカートの裾が歩くたびに揺れ、花が咲いたようだった
嬉しそうに、ふわりとやわらかな笑みと共に現れた少女は例えるならやみの石だ






近くまで来ると手に持つバスケットをトサリと地面の上に置いて
僕の隣にしゃがみ込んだ


髪から清潔なシャンプーの香りがして、向けられる笑みがあってクラリと眩暈に似た感覚が襲う

何の抵抗もなく、こんなに近づけるのはきっと僕のことを尊敬と言う眼差しで見ているからであって星のように輝きを閉じ込める大きな瞳には甘さなんてものは一欠けらもないのだろう


高鳴る鼓動を抑えいつもどうりに平然とした態度を装って話しかけた





「こんにちは、ナマエちゃんはどうしてここに?」

「石探しですよ。新しくイーブイが生まれたのでいつ進化したいって言ってもいいようにと思って、この子と探しに来たんです」

「ぶらっき」


ナマエちゃんの少し後ろ、主人を見守るようにこちらを見つめるのは彼女の一番のパートナーであるブラッキー

僕のココドラとメタングが挨拶をすればこちらもまた頭をぺこりと下げて返しているというとても礼儀正しい子だ




「それと、休憩するためにポフレと紅茶も持って来たんです。ここは少し肌寒いですし、長時間こもることになりそうなので準備はバッチリしてきたんですよ」



おいていたバスケットの中、フタを開ければポフレの香りが漂いそれに反応したココドラが嬉しそうに声を上げる



「ふふ、ココドラも食べる?あっダイゴさんもよかったらどうですか」

「いいのかい?僕も貰って」

「はい、皆で食べたほうがおいしいですから…それに」





ぎゅっと手を握られて「やっぱり」と呟きが聞こえた


「予想どうりですね。ダイゴさん一度始めるとずっとやってる人だから手がすごく冷えていますよ。すぐ準備するので少しだけ待ってください」



握られていた手が離され、シートを引き始める姿が見える中、包み込んだ手の小ささや微かに残る手の熱を感じていた
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