short story

□想いがつながる数秒前 (キョウヘイ)
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僕が恋というものに気が付いたのは彼女がいなくなってからだった



ポケウッドで初めての撮影に挑戦して、色々失敗もしたけどなんとか作り上げた1本の映画
その上映が終わった後、1人の女の子が1輪の花束をもってほほ笑んでいた


それが彼女だった



その日から映画が上映されるたびに贈られる言葉と1輪の花、その言葉はいつも、きらめきとあたたかな温度をもってじわりと胸に滲むように優しくて

映画の事を語る瞳が甘くきらめき、僕に向けられるたびにドキリとした




花のような唇がほころび僕の名前を口にするときドキドキして息が出来なくなるほど苦しくなったり、胸の鼓動が高鳴ったり

カロス地方に行くことになってしばらく会えなくなると言われたとき胸を裂かれるような切なさと、寂しさを覚えたり


ああ、これはきっと恋というものだと知ったのは離れてから恋愛の映画に挑戦した時だった





一生懸命に自分の気持ちを伝える役

愛する人を助けるために想いを一心に伝える役


ワクワクしたり、ひどくもどかしくなったり、恋をしていると人は変わるという通りなのか前よりもぐっと役に共感できるようになった




瞼を閉じれば蘇ってくるのは彼女の優しい言葉と笑顔。そして別れの日に見せた今にも泣いてしまいそうな寂しそうな顔


泣いていないかな…なんて、何度も思ってしまうほど離れてみて彼女の存在が自分の中でどれほど大きなものだったのかを知ることになった





あたたかな日々の中で彼女に対する感情が"好き"というものに変わった時、その感情は僕にひどく甘い、こみ上げてくる愛おしさと、それを伝えられない寂しさの両方を心の中に残した





そして今日―――











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