オリジナルストーリー
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・繋いで、書き換えて
ミクリ
「でねでね、そんな風に言われたの初めてだったからびっくりしちゃったの。
でも、すごく嬉しかった」
しみじみと話す姪のルチア。
話の内容は今日会う予定になっている少女のことばかりだった。
コンテストで有名になればなるほど周りの環境は変わっていく。普通に見れなくなってくる。
ルチアならばコンテストアイドルというフィルターを通して、それはいつの間にか周りの期待に応えるように、求める色に染まる様に、本人は自然体でいたくても空気がそれを許さない。
自分だけが変わらなければならず、それを周りも当たり前のように受け入れ、本心はいつしか忘れ去られてしまう。
小さな呟きがいつの間にか大きく、ゆがみを伴って広がれば本人はもうどう知ることもできず最後に行き着くのは諦め。
『仕方がないよ。気にしない方がいい』
それがかつて私がルチアにかけた言葉だった。だがそれからも口にはしなかったが心の中では自分自身を見てくれる人が欲しかったのだろう。有名になって、人気になるほどに、アイドルではない自分でいる時の大きな差に、その差が深くなればなるほど焦がれていたのかもしれない。
それを叶えた少女に少なからず興味を持ったのも事実で、可愛い姪の頼みだからと今回のことを承諾した。
「どうしよう、来てくれるかな。叔父様、きてくれなかったらどうしよう」
時間が近づくにつれ落ち着きを無くし始めるルチアを宥めるように
「ルチアもう少し落ち着いたらどうだい。約束の時間までもう少しあるだろう」
「うん、そうだよね」
ふぅっと自信を落ち着かせるように深呼吸している傍らハーブティーに口をつける。
木の匂いが感じられるここは大通りからわき道に入ったところに位置する小さなカフェだ。人通りの少なさはこのカフェを利用する人の数に直結しており平日のこの時間帯は人もそれほど多くなく静かで心地がいい。
私の友人とルチアにここを教えれば気に入ったのか時間があるときに訪れていることを知っていた。
ルチアがこの場所に少女を呼ぶという事はよほどその子のことが気に入ったのだろう。
絡まれていた所を助けてもらったと聞いていたがその子は勇敢な性格をしているのだろう。
誰でも面倒ごとに割って入るのは進んで出来ることではない。
知り合いならともかく赤の他人、それも大人の男性がいる元にルチアを助けに入ったのだから大したものだ。
自然と頭の中でくみ上げられていく人物像。
しかしそれはかけられた控えめで細い声を聞けば途端に崩れ去っていく。
「ナマエちゃん。久しぶり」
「久しぶりルチアちゃん。あの、始めまして」
温暖な気候故厚着をしている人はこのホウエンには少数派だ。現れた少女もまた短い袖の付いたワンピースを着ていた。
ゆらゆらと揺れる袖から伸びる腕は細く白い。アッシュブロンドともいえる灰色がかった色合いの髪が腰を折った動作につられてサラサラと揺れた。
上げられた顔に浮かべる表情は緊張からか堅い。
(想像とかけ離れた少女がこちらを見つめていた)