short story

□ココロからのエールを(チェレン)
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一度そう思い始めると雪がこんこんと積もるように不安が募る

どんどん悪いことばかり考えてしまうのはわたしの悪い癖だと自覚しているがなかなかこの癖は治ってくれない


考えを止めようとしてギュッと目を閉じる


暗くなった視界、膨らんでいく不安があって暗い深海に一人で沈んでいってしまうようだった





パチパチっと弾ける音がした

そっと閉じていた瞼をあければ
ベットの上に膝から降りてその上に立ったであろうマイナンがにっこりと笑って両手に光のポンポンを作った




"おうえんポケモン"

初めてポケモン図鑑で検索して表示されたマイナンの生態

"自分よりも仲間の応援のほうが大切"

"仲間が負けそうになると、体から出る火花がどんどん増えていく"



それに連動するようにどんどん大きくなっていく火花。触れたマイナンの優しさに気が付いたら手を伸ばして抱きしめていた


「ありがとう…ありがとう。マイナン」

「まぁい」


バトルの後と似た会話
でも、答えるマイナンの声は明るい


小さなこの子はいつだって背中を押してくれた




「マイナン…ちゃんと伝わるかな

…こんなわたしでも、チェレンさんを助けてあげられるかな」

「まいっ!!」

当然だ、と言わんばかりの返事に抱きしめていた体を少し話して見つめ合う


「うん…言ってみなくちゃ何も始まらないよね」





心に灯った温かい気持ちを抱きしめて小さな勇気を振り絞った






次の日、勇気を出してトレーナースクール兼、ジムに向かう



「っ…大丈夫」



自分にそう言い聞かせるがやっぱり不安でマイナンを抱きしめる腕に力が入ってしまっていた

それに気が付いたマイナンは腕から抜け出して小さな手をぐっと伸ばしぽんぽんっと頬を撫ぜられる



「うん、頑張るね」


すぅっと息を吐いてドアを開けようとしたときガチャッといきなり開かれたドアに慌てて後ずさる。やわらかな金色が見えた。温かな色を纏って、赤いフレームの奥にある澄んだ瞳と視線が重なった




「わっ、ごっごめんね。いきなり開けちゃって大丈夫」


次々に目に飛び込んでくるものを戸惑いながら整理して何とか言葉を紡ぎだす


「大丈夫です…少し、びっくりしてしまって」

「うん、そうだよね。ほんとにごめんね。…あぁ〜、もうこんな時間だっ」



頭を下げられてわたしの腕につけている時計が見えたのだろうか。突如上がる大きな声にびくりとまた驚いてしまった


コロコロと変わる表情が幼い子供のように見えた



「もぉ〜今日は新人トレーナにポケモンを渡す日なのに、遅刻しちゃう…」




懐かしいと思った
わたしもホウエン地方を旅立つときに博士からアチャモをもらった。「この地方を旅するわけではないから受け取れません」そう言ったわたしに「いいんだよ。旅はたくさんのポケモンがいたほうが楽しいからきっとその子も#bk_name_1#ちゃんを助けてくれるよ」と言ってアチャモを貰った時のことが蘇る



「えっと、わたしはこの通り大丈夫です。だから、早く行ってあげてください」

「う、ん…ほんとにごめんね」


駆け出し遠ざかっていく足音
開けはなたれたドアの奥

いつもチェレンさんがいる部屋に足を向けた



軽くノックをして中から「どうぞ」の声の後、静かにドアを開けた

たくさんの本棚が並ぶその奥にふわりと白いカーテンが膨らんでテーブルと二つのイス。その片方に腰掛けて静かに窓の外を見ているチェレンさんがいて、テーブルにはさっきまで誰かがいたのかカップが二つ置かれていた



「いらっしゃい、ナマエちゃん」

「…こんにちは」


挨拶をしてそばまで歩いていく、そして気が付いた

差し込む明るい日差しのように、覆っていた雲が無くなったかのように、表情がすっきりとしていたことに
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