浅夢

□幽かな記憶
1ページ/5ページ

「ど……て………し…よ………」
誰…?泣いているの…?
何を伝えようとしているの?

「……し……さ…しい…」
聞こえないよ、そう言いたかったが
声にはならなかった

幽かに聞こえるこの声は誰だろう
何処かでよく聞いた気がする

何故かこの子の声を聞くと
胸が苦しくなる。

「どうして誰も………………」

「ど…し………」

あぁ、やめて聞きたくない
この声をずっと聞いていたら私は
心が壊れてしまいそうだ…

「…………」

私の願いが届いたのか
しばらくするとその声は
全く聞こえなくなっていた

だがまた声が聞こえてきた
今度の声はしっかり聞こえてくる

「おい琴音、起きろ琴音!!」
誰かが私を呼んでる

「んっ…誰…?」
寝起きで重い瞼を擦りながら
見上げてみると見えたのは
白い大きな狗だった。

「やれやれ、やっと起きたか」

「ぎゃあああああああっっ!?」
いきなり目の前に妖が居たことに
ひどく驚いた私はその白狗を
バチンッと大きな音をたてて
ビンタしてしまった

「ぎゃっ!?な、何をする!
この無礼者!暴力女!」
白狗はひどく怒って暴言を吐いてきた

あれ、この声とこの姿どこかで…

「せっかく起こしてやったというのに
なんてことをするんだ!!」
私を起こしてくれた?

少しずつ覚醒する私の意識
そうだこの白狗は……
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ