Book-long-B

□本来の姿
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一息ついた後、“激安の王道ドンキ・オオテ”のある通りまで戻ってくると先ほど雄英の謝罪会見が流れていたビルの側面に設置された液晶にはオールマイトとオール・フォー・ワンの交戦の様子が中継されていた。

『悪夢のような光景!突如として神野区が半壊滅状態となってしまいました!現在オールマイト氏が元凶と思われるヴィランと交戦中です!信じられません!ヴィランはたった1人!街を壊し、平和の象徴と互角以上に渡り合っております……』

実況とともに流れる映像では早過ぎるスピードと砂埃により鮮明に見ることは出来ないが、どうやらオールマイトが押されているようだ。しかし、それよりも違和感を与えたのは戦うオールマイトの姿だった。

『えっと……何が、え……?皆さん見えますでしょうか?オールマイトが……しぼんでしまってます……』

アナウンサーが困惑するのも無理はない。そこにいたのは、骸骨のような肉つきの貧弱な体をしたオールマイトだった。いつも学校でみる筋肉質な姿とはかけ離れている。

「そんな……ひみ……つ……」

私の隣で顔を蒼白させた緑谷は不安そうな表情で小さく呟いた。

「秘密?」

私がすかさず聞き返しても、緑谷は固まったままそれ以上を答えることはしない。ただ口を開けたまま、呆然と立ち尽くしている。

オールマイトの普段の姿と大きく異なった風貌と、余裕を失ったその表情に不安を感じ始めたのは私達だけではなかった。街中がざわつき、口々に感情を吐き出して言った。

「オールマイト……やばくない!?」
「そんな……嫌だ……オールマイト……!」
「あんたが勝てなきゃあんなの誰が勝てんだよ……」

あのヴィランを相手にできるのはオールマイトしかいない。そう誰もが感じていた。だからこそ、負けないでほしい。そんな思いが声援として画面へ向けられていく。

「姿は変わってもオールマイトはオールマイトでしょ!?」
「いつだって何とかしてきてくれたじゃんか!」
「オールマイト!頑張れ!」
「まっ負けるなァ!オールマイト!」
「頑張れェェェェ!」

私達もその声援に紛れながら全身に力を入れて声をあげた。今やオールマイトだけが希望となっている。実際に届いてはいないのはわかっていても、声をあげずにはいられなかった。



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