Book-long-B
□安否確認
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「鏡見さん!靴持ってきたよ!」
駅のコインロッカーにしまっていた衣類を手に持ってきた緑谷は小走りに近づいてきた。草履を脱いでいた私の足袋はボロボロになっている。
「ありがとう、緑谷」
私は優しく微笑み返すと、履いてきた靴を受け取り足を突っ込んだ。それと同時くらいだろうか、私のポケットの中で携帯の呼出音が鳴った。
「もしもし、轟?」
かけてきたのは轟だった。まだ安否を確認出来ていなかったことで不安が込み上げ、ドキドキと心臓が早くなる。
『鏡見、そっち無事か?』
「うん、こっちは大丈夫。轟の方は!?逃げ切れた!?」
こちらの心配をするくらいだ、うまく逃げられたのだろう。私は先走る気持ちを抑えて轟の回答を待っていた。
『多分な、奴の背面方向に逃げてる。プロ達が避難誘導してくれてる』
「よかった、私達は駅前にいるよ。ここはあの衝撃波も圏外みたい。奪還も成功したよ!」
尽きつつあった私の体力は安堵によりさらにグッタリと飯田くんにもたれ掛かっていた。そんな飯田くんもだいぶ体力が削られていたようで、額からは汗が滴っている。電話を切った後、私達は轟と八百万さんが駅前に来るのを待つことにした。街にはたくさんの人が溢れている。それがやけに安心感を与えてくれていた。先ほどの緊迫した空気が嘘のようだ。
「いいか俺ァ助けられたわけじゃねぇ!一番いい脱出経路がてめェらだっただけだ!」
「ナイス判断!」
爆豪の嫌みたらしい強がりにも切島は笑顔で答えている。そんな彼もさすがに表情には疲労が垣間見えていた。私はその様子を微笑ましく眺めていた。
「んだよ」
爆豪は不服そうにこちらに視線を移すと、少しだけ高圧的に私へ言った。この表情、この声、そしてこの眼差し。いつもとなんら変わりはない彼だが、それが逆に爆豪を奪還できた現実を再認識させた。
「よかった、無事で」
私は虚ろな目のまま、爆豪へ言った。本心が素直に言葉に出ていた。林間合宿で誰よりも近くにいたのに救えなかったことをずっと後悔していた私だったが、それも今は少しだけ救われた気がしている。
「は……意味わかんねェ。俺がヴィランなんかにやられっかよ」
「それもそうだね」
唇を尖らせて納得のいかない表情で言う爆豪の姿に、なぜか可笑しくなった私はクスクスと笑いながら答えた。
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