Book-long-B
□成功
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「よっしゃ!行けるぜ!」
「まだ安心は出来ない……!このまま街まで行こう!」
「轟くん達、ちゃんと逃げられたかな……」
「ちょっと爆豪!威力強すぎ!バランス取りづらいから弱めてよ!」
「あァン!?てめ文句言ってんじゃねェぞ鏡見!」
私達は逃げる最中も各々が自由に口を開いていた。それだけ余裕が出てきたということか、喧嘩をする暇さえ生まれていた。
「飯田の格好して女喋りしてんなよ気持ち悪ィ!半端にパクるくらいならやるんじゃねェ!」
爆豪は切島の手をグッと握ったまま、片手では私達を押し出そうと〈爆破〉を続けている。そこまではいい。だが、いかんせん口と態度が悪過ぎる。
「うるさいなぁ、救けてもらっといてそれはないんじゃない!?」
「あァ!?俺は救けられてなんてねェ!勘違いすんなパクリ野郎が!」
私も飯田くんにしがみついたまま足は一生懸命に仕事をしていた。ずっと〈模写〉しやすそうだと思っていた個性〈エンジン〉は案の定すぐに使うことができ、それでいて体への負担は殆どないようだ。爆豪の〈爆破〉とは大違いである。
「喧嘩すんなって……鏡見もやめとけ、もう」
切島が呆れたように言った。私はプイッと顔を外側へ向けるとそのまま街の中心部へと足を進めていった。人通りの多い駅前までやってくると、私は突然眩暈に似た症状に襲われ、フラフラとした足取りで飯田くんに倒れこんだ。
「おっと……!どうした鏡見くん!」
突然もたれかかった私を飯田くんが支え、心配そうな顔を向けて言った。
「〈エンジン〉は体力の消耗が激しいからな、疲れたんだろう。オレンジジュースを飲むといい!」
「大丈夫……ちょっと力が抜けただけだから」
飯田くんの助言を私は丁重にお断りし、力の入らない体を無理矢理に立たせようと気張って行った。だが、気づけば〈模写〉は解け元の姿に戻っている。これは私の体力が飯田くんの個性に耐え切れなかった証拠だろう。まだまだ自分の未熟さを痛感するなかで私は飯田くんに支えられながら混乱渦巻く街を歩いて行った。
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