Book-long-B
□ストッパー
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私達がそうやって覗き見を繰り返していると、オールマイトとオール・フォー・ワンの戦闘は次第に本格的になり、少し離れたところにいた爆豪とヴィラン達にも動きが出始めていった。
USJ事件で私たちを散り散りにしたワープのような個性が発動し、蒸気のように揺らめく漆黒の霧が辺りに広がっている。ヴィラン達もここから離れるつもりなのだろう。
「やばいよ緑谷……奴らが動いた!爆豪をまた連れて行かれたら、もう追えなくなる……!」
「う、うん……!ちょっと待って、何かいい策……」
そう言って緑谷は顎に指先を添えながらブツブツと考える様子を見せた。私達は無闇にここから動くことは許されない。オールマイトもオール・フォー・ワンが邪魔をしており自由に動けていないため爆豪を救けられる状況にないようだ。その隙を見計らってかヴィラン連合が爆豪もろとも逃走しようと一斉に爆豪に襲いかかっていった。強引にでも連れ去るつもりのようだ。
「爆豪……!」
私は思わず強く握りしめた拳に力を入れた。何も出来ずにいる自分が情けなく思う。爆豪は6名のヴィランに囲まれており逃げられる状況ではないというのに、こんな塀の裏に隠れて見ていることしか出来ないのだから。
「堪えるんだ、皆……!」
飯田くんですら不甲斐ない自分を情けなく思っているのか悔しそうに視線を落としている。みんな自分の感情を抑え込んで我慢に徹していた。すると、ずっと横で小さくブツブツと呟いていた緑谷が何かを閃いたかのように顔を上げて言った。
「飯田くん、みんな!」
「ダメだぞ……緑谷くん……!」
飯田くんはそれ以上を聞く前にストッパーとしての役割を全うするかのように念を押した。だが、緑谷は臆する様子はなく続けた。
「違うんだよ!あるんだよ、決して戦闘行為にはならない!僕らもこの場から去れる!それでもかっちゃん救け出せる方法が!」
緑谷の必死の目を見たせいか少しだけ時間が止まったように感じた。一刻を争う事態のため、轟はすかさず答えた。
「言ってみてくれ」
そう言われると緑谷は視線を落とし、自信がなさそうな悲しげな表情のまま静かに話を始めた。
「でもこれは……かっちゃん次第でもあって、この策だと多分僕じゃ……成功しない。きっと、鏡見さんでもダメなんだ。だから切島くん、君が成功率を上げる鍵だ」
勿体ぶった言い回しは、私に疑問を残していた。私や緑谷では力不足だが、切島なら成功できるというその案。みんなが感じた疑問に答えるように緑谷は続けて口を開いた。
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