Book-long-B
□同行理由
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「え、飯田くんも行くの?なんで?」
私はあまりの急展開に戸惑っていた。あれだけ止めていた彼が、いきなり同行を決めるとはどんな風の吹き回しだろう。疑問が止まらない私に対して飯田くんは真面目な顔つきで答えた。
「強情な君達だ、もう何を言っても行く気だろう。ならば学級委員長として引率すべき。それに八百万くんが同行すると言うのなら話は別だ」
その眼差しは真剣そのもの。私たちのことを強情と言っているが、こうなった飯田くんはもう何を言っても意思を曲げないだろう。
「ま……まァいいけどよ、その方が心強いし」
切島も戸惑いを見せているが、案外すんなりと受け入れていた。確かに飯田くんが来てくれることはとても心強い。しっかり者で頭も良く常識人の彼ならきっと力になってくれるに違いない。
「暴力を振るってしまった事……陳謝する。ごめん」
飯田くんは緑谷に対し頭を下げ、申し訳なさそうに言った。それを黙ってみていた八百万さんは、少しだけ呆れたように飯田くんに言い聞かせた。
「本当ですわ、飯田さん。同行する理由に対し説得力が欠けてしまいます」
「大丈夫だよ気にしてないから」
緑谷は殴られた頬を赤らめながらも、何事もなかったかのように振舞っている。それなりに痛かっただろう。それも友からの怒りの拳だ、きっと心へのダメージもあったに違いない。それを平気な顔で受け入れた緑谷はやはり優しい奴だ。私が感心しながら緑谷を見つめていると、飯田くんは視線を下げたまま口を開いた。
「俺は……君たちの行動に納得がいかないからこそ同行する。少しでも戦闘の可能性を匂わせれば即座に引き戻すからな……!特に鏡見くん!君は喧嘩っ早いからな!言わば監視者……そうウォッチマン!しっかり見張らせてもらうぞ!」
「べ……別に私は喧嘩っ早くないよ!」
突然矛先が私に向いたことで、少しだけ動揺をしてしまっていた。
「割と気が短いからな」
「轟!聞こえてるからね!」
小さく呟いた轟の一言を聞き逃すことなく、私はすかさず鋭い視線を向け注意をした。そんなやり取りを見ていた八百万さんは何やらポケットを探っている。
「これはプロの仕事。端から見ればあなた方が出張る必要性は一切ありません。しかし、お気持ちがよくわかるからこその妥協案ということ、お忘れなきよう」
釘をさすようにそう言った八百万さんは、ポケットから私たちが求めていたデバイスを取り出した。手のひらに収まるほどの小さなデバイス。あれがあれば爆豪の居場所がわかる。
私達はそのデバイスを目にし、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
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