Book-long-B

□説得
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「実は俺と鏡見と轟さ、昨日もきててよォ。そこでオールマイトと警察が八百万と話してるとこ遭遇したんだ」

切島は昨日の出来事をゆっくりと話し始めた。お見舞いに来てたまたま発信機とデバイスの存在を知ったこと、それを使えば爆豪の居場所が掴めるということを。

「つまりその受信デバイスを……八百万くんに創ってもらう……と?」

飯田くんは表情を変えない私と轟にも視線を送ったあと、察したように探る目で問いかけた。私は変わることない意思をそのまま口にした。

「そうだよ。それを使ってヴィランのアジトから爆豪を連れ戻してくる」

「ば……馬鹿か!君達は!自分達が何を言っているか分かっているのか!?」

視線を逸らしたままの私に、飯田くんは病室であることを忘れて大きな声を上げた。私は臆することなく淡々と答えていく。

「分かってるよ。でも、何を言われても変わらない。私達は今日の夜、ここを発つ」

「こ……これはプロに任せるべき案件だ!生徒の出ていい舞台ではないんだ馬鹿者!」

飯田くんは強く拳を握りしめながら、私や切島そして轟へ向けて強く言い放った。私と轟は表情1つ変えずに、緑谷の反応を待っていた。こうやって反対されることは予想していたのだ。賛同者だけでいい。みんなの協力を得ようとは考えていないのだから。

「んなもんわかってるよ!でもさァ!なんっも出来なかったんだ!ダチが狙われてるって聞いてさァ!なんっも出来なかった!しなかった!ここで動けなきゃ俺ァヒーローでも男でもなくなっちまうんだよ!」

切島は思わず感情的になっていた。補習組として遠隔地にいた際に起きた今回の出来事。不甲斐ないと彼なりに悩んだ部分も多かったのだろう。私はそんな彼すら救いたいと思う気持ちがあった。

「切島落ち着けよこだわりは良いけどよ、今回は……」

「飯田ちゃんが正しいわ」

上鳴と梅雨ちゃんが仲裁に入るも、その場が収まるわけではなかった。私達は頑なに意見を変えようとはしない。居心地の悪い雰囲気を纏った病室で、切島は緑谷に手を伸ばして口を開いた。

「飯田が皆が正しいよ!でも!なァ緑谷!まだ手は届くんだよ!」

そう言って差し伸べられた手を、緑谷は考えるようにじっと見つめ大きく唾を飲み込んだ。



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