Book-long-B

□結果次第
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私と切島、轟の3名はしばらくの間、会話をすることなくロビーに向かって院内を歩き進んでいた。それぞれが、短い面会時間の中でのやりとりを振り返り考えていた。

「……八百万さん、デバイスくれるかな」

「さあな、五分五分だろ」

私が小さく呟いた一言を轟が拾う。言ってみたものの、私も初めからその答えに同感だった。八百万さんの表情や声、そして性格からしてデバイスを容易く〈創造〉してくれるとは思えない。そして切島も同じことを考えていたようで、自信なさげな面持ちで口を開いた。

「そもそもデバイスがなきゃ俺達の作戦て……」

「練り直しだろうな」

轟の酷く冷静な受け答えがさらに現実味を帯びて行く。轟は表情を何も変えないせいか何を考えているのか相変わらず読めない。私たちはただ八百万さんを信じるしかなかった。

ナースステーションにて面会終了の手続きを取ると、私達はそのまま病院を後にした。

「じゃあ、また明日ね」

「おう」

轟は私と切島とは違うホテルに帰るようだ。逆方向に歩いて行く彼の背中を見つめながら私と切島は小さくため息をついた。

「八百万のデバイスが無かったら場所も特定できねぇよなァ……」

「そうだねぇ」

遠くを見つめたままの切島に私は力なく答えた。結果が決まったわけではないはずなのに、光が断たれてしまったような気分である。少しの光が差し込み、爆豪を救ける算段が整った。それに曇りが陰っただけでこんなにも気持ちが落ち込むものなのだろうか。

だが、冷静に考えればただ振り出しに戻っただけの話だ。たまたま八百万さんのデバイスの存在を盗み聞きして知ることができた。今日ホテルを出た時点ではヴィランの手がかりは愚か何の作戦もなかったのだから。

「八百万さんを信じよう。まだ断られた訳じゃないから」

私は掌にグッと力を込めて、切島を見た。すると切島は大きく伸びをして気持ちを切り替えるようにして言った。

「だな、帰るか」

そうして私達はまた来た道を戻り始めた。遠くからは私達が宿泊しているホテルが覗いている。明日、八百万さんがどう結論を出すかにより左右される私達の作戦ではあるが、爆豪を救いに行くことに変わりはない。誰になにを言われようと明日の夜、私は爆豪を救けにここを出る。




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