Book-long-@

□応戦
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「………っ!!」

脳無から食らった攻撃で肋骨が数本折れたようだ。切島の個性を完全に使いこなせていないとはいえ、わりと〈模写〉しやすい〈硬化〉だったが、脳無のパワーはそれをもってしても防げないほどだった。

「へぇ……面白い個性だなぁ。いいなぁ……欲しいなぁ………」

モクモクと上がる砂埃の先でそんな不気味な声が聞こえた。非常に視界が悪い。それはいつ2発目がきてもおかしくない状況だった。だが、私が痛む腹部を抑えながら立ち上がると、さらに驚くべき光景がそこにはあったのだ。

あの頼りない緑谷が私を庇って戦っている。逃げ腰なんかじゃなく、あの脳無に立ち向かっている。私はその様子を見て、いつの間にか我に返っていた。

「緑谷……!!」

私が発した声。それは突然大きな音を立てて開いた出入口の扉の破壊音でかき消された。モクモクと立ち込める砂埃。そこに立っていたのは、待ちに待ったヒーローの姿。凄まじい存在感と安心感を与えてくれる人物、平和の象徴オールマイトだった。

「もう大丈夫……私が来た!」

そう言ってスーツのネクタイを緩める顔は一切笑っていない。授業で見た陽気なオールマイトはそこにいなかった。

彼は瞬きをしただけの時間のなかで、一瞬にしてヴィランを蹴散らし私のそばへ消太さんを運んできた。ボロボロになって意識がない彼を目の当たりにし、私の目からは我慢していた涙がこぼれ落ちてしまった。

「泣くのはまだ早いぞ、鏡見少女。相澤くんを早くリカバリーガールのところへ」

そう言って私の背中へ消太さんを背負わせた。こんな形で消太さんの暖かい体温を感じさせるなんて、神様は本当に意地悪だ。

「消太さん……!」

泣いてはいけないとわかっていても、涙が出てしまう。私はそれを拭うことなく消太さんを背負ったまま出入口へと一歩一歩足を進めていった。

オールマイトが来て間もなく、雄英の先生たちも数名がUSJに到着した。あっという間に捉えられるヴィラン達。それでも、主犯格の数名は〈ワープ〉によりあっという間に逃げ去ってしまったのだった。

恐怖から解放された安心感と疲労、肋骨の痛み。様々なものが混ざり合った私は、駆け寄ってきてくれたプレゼント・マイク先生に倒れこんだ。かつてない恐怖を目の当たりにした私は、遠のいて行く記憶の中で消太さんの名前を呼び続けていた。







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