Book-long-@
□今日が始まる
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朝5時。鳥の鳴き声に目が覚める。
最近疲れているのか、眠りが浅い。ちょっとした物音で目が覚めてしまう。この時間ではまだ消太さんも起きてはいないだろう。
静かに体を起こし、音を立てないように扉を開けて廊下を進んでいった。リビングに入り冷蔵庫からミルクを取り出すとコップに移して一気に飲み干した。朝のミルクはお風呂上がりと同じくらい好きだ。
ゴクゴクと飲む私の足元に、私と同じように早起きをした愛猫のミケがいつの間にか寄ってきていた。私は猫用のお皿にもミルクを入れ、足元に置いた。美味しそうにペロペロと舐めるように飲むその姿が微笑ましい。私はミケの背中を一度だけ優しく撫でると、立ち上がって支度を始めた。
消太さんの偏った食生活はいつか体を壊してしまうのではないかと不安にさせる程だ。ただでさえいつも顔色も具合も悪く見える。
私は朝食を作り、身支度を整えると消太さんを起こしに部屋へ向かった。
ガチャ。
まだ朝の6時前。外はまだ日が差すほど明るくはない。とはいえ、ここまで光が入らないものだろうか。もう何年もここにいるから今更驚くことはないが、いつもこの真っ暗闇には疑問を投げかけていた。
「消太さん。私、鍛錬場へ行くので今日も先に行きますね」
すると暗闇の中で彼が起き上がるのがうっすらと見えた。まだ頭が完全に起きていないのだろう。いつもよりさらに低くなった声で言った。
「なんだまだ6時か。俺も行くか?」
「いえ、今日は身体作りをするつもりなので。朝ご飯は置いてあるのでいつも通り出てください」
私は暗闇の中へ入っていくと、消太さんへ手を伸ばした。消太さんも私の気配を感じ、そっと右手を挙げる。
パシッとハイタッチをするかのように、二人で手を合わせた。これがいつもの二人の朝の光景。毎朝、消太さんを〈模写〉して私の1日は始まる。
「いってきます」
私はそう言って消太さんの手から伝わる暖かいぬくもりの余韻を感じながら部屋を出た。
昨日、オールマイトに教えてもらった。雄英高校には鍛錬場がたくさんある。放課後は人でいっぱいだが、朝はチャンスだ!と。
昨日の訓練では納得のいく結果は出せなかった。勝ち負けの話ではない、内容の問題だ。私はやはり個性を活かしきれていなかった。姿形を変えるだけでなく、その人の個性を使ってこそ〈模写〉は力を発揮できるのに。
やらなければならないことがたくさんある。私は制服に着替え、ジャージをリュックに突っ込むと静かに家を出た。
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