Book-long-@

□作戦B
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場所は変わってここは5階、このビルの最上階だ。

そこには核兵器が設置され、現在は瀬呂がトラップを仕掛けつつ守っているところだ。切島は1階から上がってきたが、梅雨ちゃんには遭遇しなかったという。先ほどの階にも気配は無かった。

となると、おそらく今梅雨ちゃんはここ、5階に潜んでいるに違いない。まだ瀬呂から無線は入っていないが、早いところ梅雨ちゃんを見つけたいところである。

「瀬呂、状況は?」

先ほどと同じミスは犯さないよう細心の注意と警戒を払い、無線で核兵器付近に待機する瀬呂へ問いかけた。

『2人が頑張ってくれてるところ悪いんだけど、こっちは今のところすげー平和』

すぐに、返答が来た。まだ梅雨ちゃんとは接触してないようだ。私は残り時間も考慮し、個性を使って作戦Bを決行することにした。

「2人とも、作戦Bいくよ」

そう無線に流し、私は“常闇踏陰”へと変貌した。先ほどの戦闘中に、止められはしたが左足が常闇の体に触れていた。しっかりと〈模写〉していたのだ。

私が扮する常闇は、静かにフロアを小走りで進む。隠れることなく堂々と梅雨ちゃんを探していると、角からひょっこりと顔を出す姿が見て取れた。

「常闇ちゃん、どうしたの?」

梅雨ちゃんは何も疑っていない。当たり前だ。彼女は私の個性を知らないし、まさか偽物が目の前にいるとは思わないだろう。

「さっき無線で話した通り切島と鏡見と遭遇した。2対1は不利だ。体制を立て直して2人で行くぞ」

フロアにあるダンボールの陰に身をかがめ、声を潜めて話す。訓練中とはいえ梅雨ちゃんを騙しているような状況になっていることに罪悪感を覚えていた。でも、これがきっと消太さんの言っていた『Plus ultra-更に向こうへ-』なのだ。自分自身にそう思い込ませるしかなかった。

私は信じ込んでいる梅雨ちゃんに心の中で謝りながら、隙だらけの彼女をテープで捕獲した。驚く表情がさらに胸を締め付ける。

「……梅雨ちゃん、捕獲完了」

私は力無い声で切島と瀬呂へ伝えた。

「瀬呂、もうそっちはいいから階段のところきて」

私はまた自身の姿に戻り、瀬呂の合流を待った。その後瀬呂はすぐに駆けつけ、残り時間は5分。あとは常闇を捕獲すれば完了だ。

自分のしたことへの葛藤を整理する時間はない。私は心を鬼にしたまま作戦Bを続行するしかなかった。



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