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□オールマイト
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雄英高校。

それはヒーロー科、普通科、サポート科、経営科に分かれてそれぞれが夢実現に向けての学びの場となるヒーロー育成校である。

カリキュラムには国語、数学、英語などの必修科目の他に一般教養や専門教育学があり、なかでもヒーロー基礎学はヒーロー科限定の科目だ。

私はこの科目を一番楽しみにしていた。

午前中の必修科目を終え、昼食後にあるヒーロー基礎学を待ちわびていた。そわそわする生徒達、教室が異様な緊張感に包まれる。すると突然、教室の扉が開き一人の人物が現れた。

「わーたーしーがー!普通にドアから来たァ!!!!」

その声の主。平和の象徴、“オールマイト”だ。以前にも話したことがあったと思うが、私は昔テレビで一度だけこの人を見たことがある。No. 1ヒーローであり、存在そのものが犯罪の抑止力となる程の実力の持ち主。そんな彼が、今年から雄英の教師をするという噂は聞いていたが、やはり本物を目の前にすると誰もが高ぶる気持ちを抑えることはできなかった。

「すげー!本物だ!」
「雄英の先生やるって本当だったんだ!」

教室はざわざわと騒がしくなった。金色の髪、触覚のように返り立つ前髪、たくましい肉体。そして、眩しすぎる笑顔。クラスが静まり返る前に、彼は熱い声で言った。

「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為の様々な訓練を行う科目だ!」

クラス中がオールマイトのオーラと熱気、そしてこれから始まる授業に興奮する。どの科目よりもみんなの目は輝いていた。

「早速だが今日はコレ!戦闘訓練!」

おおお!と、一斉に歓声が上がる。やっとヒーロー科らしい授業がきたと、私も思わず口元が緩んでしまう。

「戦闘服に着替えたら順次グラウンドβへ集まるんだ!」

手元に配られた戦闘服。これは入学前に提出した『個性届』と『身体情報』、『要望』により学校専属のサポート会社が用意してくれたコスチュームだ。

私は消太さんからもらった包帯のような布を引き続き腕に巻きつけ黒をベースに依頼していた。そして、日頃より〈抹消〉を〈模写〉している時間が長い私は、万が一のときのために赤いゴーグルを首から下げることにした。

続々と準備を終えた生徒が集まるグラウンドβに私が到着すると、梅雨ちゃんがこちらをじっと見つめながら言った。

「私思ったこと何でも言っちゃうの。鏡見ちゃん、あなた相澤先生に似てる」

あまりの唐突さにドキッとしてしまった。顔に動揺が出てなければいいのだが、直球で図星を突かれたことに焦りを隠せない。

「そ、そお?昔イレイザー・ヘッドのファンだったからかなぁ」

なんて、おかしなことを言ってしまった。イレイザー・ヘッドのファンなど、数少ないマニアしか居ないだろう。彼は仕事に差し支えることを理由にメディアへの露出を避けてきた。知る人ぞ知るプロのヒーローなのだ。

そうドギマギしていると、ナイスなタイミングでオールマイトが声を上げた。

「始めようか有精卵共!戦闘訓練のお時間だ!」

全員が揃い、ついに授業が開始される。膨らむ期待と共に、授業開始の鐘が鳴った。



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