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□担任登場
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ガヤガヤと騒ついた教室。あちらこちらでは自己紹介が行われている。実技試験の話をしている人もいる。私は席についたままこの後のスケジュールを確認していた。

9時から入学式、その後10時からガイダンスが始まる。体育館へは筆記用具とガイダンス資料を持って行かなければならない。

「なぁなぁ!俺、上鳴 電気(かみなり でんき)っていうんだけど、今日入学式終わったら飯でも行かね?」

「......は?」

そう言っていきなり話しかけてきた金髪少年。金髪は金髪でも、もちろん爆豪ではない。黒いメッシュを入れ、親しみやすい笑顔が印象的だがクラス中に聞こえる程大きな声で誘う彼は、きっと空気が読めない。

「バカじゃないの」

「ガーン!!!!」

これは当たり前の回答である。初対面、ましてや初めの会話がご飯の誘いって。誰でもそう答えるだろう。

「ナンパするなら他所でやれ」

上鳴の絡みに困惑していると、ふと聞き慣れた声が聞こえた。上鳴の真後ろに立つ黒づくめの姿。高身でギロリとした目つきで見下ろしている。彼が今ここにいるという状況に私までもが驚きすぎて言葉が出ない。

なぜここに、消太さんが?

「ハイ、静かになるまでに8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

時間は有限、それは何度も聞いてきた言葉だが、私は動揺して魚のようにパクパクと口を動かすことしか出来なかった。何かを言いたげな私をよそに、彼はふらっと教壇に上がると淡々と話を進め始めた。

「担任の相澤消太だ、よろしくね」

教室は依然として静まり返っている。いきなり現れた気だるそうな表情の、しかも浮浪者のような姿の彼が教師であるとゆう衝撃にクラス全員が戸惑っていた。

私も知らなかった事実。消太さんが雄英の教師をしていることはもちろん知っている。だが、私の担任になるということは一切聞いていない。今朝だって顔を合わせているのに何も言っていなかった。

私の机の前にいたはずの上鳴電気はいつの間にか自分の席に着き、背筋を伸ばして姿勢良く話を聞いていた。だが、顔色は心なしか悪く見える。

「早速だが、これ着てグラウンドへ出ろ」

そう差し出したのは体育着。どこから出たかと思えば、いつも持ち歩いている寝袋からだった。職場に持って行っているのは知っていたが、まさか教室にまで持ち込んでいるとは。また新たな一面を知った気がした。

指示の通り、全員が雄英の体育着に着替え意図もわからないままグラウンドへと出て行った。




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