Book-long-A

□豪邸
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「ここ……だよね……?」
「ああ間違いねぇ……ここだな」
「家なの?これが?」

瀬呂、上鳴、尾白、芦戸さん、耳郎さん、そして私。6人はとある門の前で佇んでいた。“八百万”とある表札に目を奪われながら、足をすくませるほどの門構えに息を飲む。

「やべぇな……こうも違うとへこむわ」

上鳴は困惑した様子で言った。それは私が言いたかった言葉である。私と消太さんが住む、薄暗く湿気じみた環境とは大きく異なり、洋風造りのまるで一種のお城のような建物が遠くに見えている。

「門から家まで遠くね?」

瀬呂も正常の感覚を持ち合わせているようで、頭を掻きながら顔を引きつらせていた。

「現実はこんなもんだよな」

なんだか悲しげにいう尾白も感覚は同じなのだろう。いや、もはやここにいる誰もが生まれの違いを見せつけられ唖然としていた。

「上鳴、あんたインターホン鳴らしなさいよ」

耳郎さんはインターホンの一番近くにいた上鳴に言った。私はその場に立たなくてよかったと内心思う。こんな豪邸のインターホンを押すのはなんだか気がひけるからだ。いちいち豪華な装飾が施されたインターホンを上鳴は緊張した面持ちでゆっくりと押した。

『いま門を開けますわ!そのままお進みになって!』

機械を通した八百万さんの声が聞こえたかと思うと、ギイィと音を鳴らせながらゆっくりと大門が開いていった。立ち竦む私達は緊張で体を強張らせている。敷地だけで言えば轟の家以上だろう。だだっ広い芝生に噴水、石像。この庭園を理解することは不可能だと、私の思考はすでに止まっていた。

「ようこそ御出でなさいましたわみなさま!講堂へ案内します」

屋敷の大きな扉が開き、玄関らしき空間で身なりを整えた八百万さんがお出迎えをしてくれた。表情はすでにやる気が伺える。

あまりの格差に言葉を失った一同は、なんとなく騒がしくしづらい雰囲気の通路を黙って進み講堂へと向かって行った。



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