Book-long-A

□繰り返し
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その日の夜。私は消太さんと食卓を囲んでいた。放課後の出来事がやけに忘れられず、少しだけ苛立ちを残したまま私は食べ物を口に運んでいった。

「それで、爆豪が私にまで突っかかってきて。終いには轟にまで!本当に信じられないです、あの性格は」

私は緑谷への爆豪の態度を頭で思い出しながら言った。なぜそれほどまで緑谷を敵視し見下すのかが分からない。彼らは幼少期からの幼馴染だと言うが、仲良くしているところは一度たりとも見たことがない。

「思った以上にこじれてんな」

消太さんはとても冷静に、白米を口に運びながら言った。何かを考えるかのように視線を落としている。担任としてどうすべきかを模索しているのかもしれないが、私がそこに踏み込むことはもちろん出来ない。

「……で、勉強は進んでんのか?」

いきなり視線がこちらに向けられたことでドキッと胸が跳ね上がる。それだけではなく触れて欲しくない話題に明らかに動揺してしまっていた。

「えっと、明日八百万さんちで勉強会する予定で……」

「勉強会?」

何だそれ?とでも言いたげな表情で怪訝そうに言う消太さんだが、“八百万”という名前に妙に納得した様子で続けた。

「まあいい。いくら演習試験の結果が良くても筆記が出来なきゃ意味がないからな。ちゃんとやってこいよ」

そう言って他人事のようにもぐもぐと食べ物を口に運ぶその姿は、私には少し冷たく感じていた。私は以前からテストが近くなると同じ疑問が湧いてくる。

「消太さんが教えてくれればわざわざ八百万さんちに行かなくてもいいのに……」

「鍛錬はみてやる。勉強は自分でやれ」

いつもこのやり取りをしているように思う。消太さんは教師だ。なのに彼はいつだって勉強を教えようとはしてくれない。こんな身近に学校の先生がいるというのに、私はテストでいい点を取れたことは数えるほどしかなかった。

私は口を尖らせ、少しだけふて腐れていた。これもまた、毎回している同じやり取りのなかのひとつなのだが。



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