Book-long-A
□宣戦布告
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爆豪の作り出したピリピリとした緊張感は、教室内に充満し誰1人として声を発することのない静まり返った空間が出来上がっていた。
「体育祭みてぇなハンパな結果はいらねぇ……!次の期末なら個人成績で嫌が応にも優劣がつく……!完膚なきまでに差ァつけて、てめェぶち殺してやる!」
そう言って緑谷を指差し、見下したような態度でさらに深く眉間にシワを寄せる爆豪の発言は今に始まった事ではない。“ぶち殺す”だなんてつくづくヒーローらしからぬ言い方だ。
「轟ィ……!てめェもなァ!!」
不意打ちで轟にも宣戦布告を言い放つと、苛立ちを丸出しにして爆豪は教室を出て行った。
ガンッ!!!
教室の巨大扉が、大きな音を立てて閉まる。シンと静まり返った教室は爆豪がいなくなった後もしばらくは静寂を保っていた。
急に宣戦布告をされたというのに表情一つ変えず冷静にしている轟。私は彼の肝の座った態度を感心しつつ、自身は爆豪に圧倒され体が固まっていた。
「久々にガチなバクゴーだ。大丈夫か?鏡見」
切島は振り返り、私に声をかけた。
「うん……大丈夫。でもなんなの、あいつ」
気持ちが落ち着けば落ち着くほど、先ほど言われた“クソモブ”と言う言葉に腹が立って来た。
「焦燥……?あるいは憎悪……」
常闇も自身の席に座ったまま冷静に分析している。
「気にすんな。テスト前でイラついてんだろ」
切島は笑ってそう言った。爆豪は頭はいい。テスト如きで追い込まれる人間ではないように思える。私はなぜあんなにムキになるのか、頭の中で考えていた。
「み……みなさん!」
林間合宿の盛り上がりが消滅したこの空気を打開しようと、八百万さんは口を開いた。
「明日は昼過ぎにうちにおいでなさって!講堂の手配が整いましたの」
そう言って無理矢理笑う八百万さんに、上鳴も作ったような笑顔で答えた。
「お……おっしゃ!みんなで頑張って林間合宿いくぞー!」
「おー!」
芦戸さんもすかさず乗ったことで、少しずつ教室は騒めきを取り戻していった。
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