Book-long-A

□逆鱗
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放課後。昼休み仕入れた情報が広まり教室内はその話で持ちきりだった。

「んだよロボならラクチンだぜ!」

上鳴は先ほどとは打って変わって自信を取り戻し、芦戸さんと共に笑い始めていた。その余裕さが逆に心配になる。その様子を見て障子は言った。

「お前らは対人だと個性の調整大変そうだからな……」

上鳴の〈帯電〉は自身が纏うだけの電気ならまだしも、対人となると調整が必要となる。力任せにしては相手を怪我させかねないのだ。

「ああ!ロボならぶっぱで楽勝だ!」

上鳴と一緒になって余裕を見せている芦戸さんの個性〈酸〉も同じくだ。彼女が放つ〈酸〉は鉄すらも溶かす強力さを誇っている。肌で触れれば負傷必須だろう。

「あとは勉強教えてもらって、これで林間合宿バッチリだ!」

そう言って都合の良い解釈で林間合宿に期待する様子はどうも引っかかる。そんなうまい話はないと、この時の私はやけに冷静に物事を見ていたのだった。

「人でもロボでもぶっ飛ばすのは同じだろ。何がラクチンだアホが」

楽しげな雰囲気だった教室が、突如発せられた爆豪の一言で空気が一転した。一連の話を聞き、冷静に見ていたのは私だけではなかったようだ。

「アホとはなんだアホとは!」

冗談交じりに言い返す上鳴だったが、それが逆に爆豪の苛立ちに拍車をかけてしまったのだった。

「うるせぇな!調整なんか勝手にできるもんだろ!アホだろ!……なぁ!?デク!」

そう言って爆豪は近くで黙って聞いていた緑谷に視線を移し、眉間のシワを際立たせつつ言った。

「個性の使い方……ちょっとわかってきたか知らねぇけどよ。てめぇはつくづく俺の神経逆撫でするな」

緑谷は困惑した様子を見せるも黙って爆豪の話を聞いている。私は今まで静かにしていたが、爆豪を落ち着かせようと席を立ち上がった。

「ちょっと爆豪……」

「てめぇは黙ってろよクソモブが!」

そう言って苛立ちを露わにした爆豪は私を鋭く睨み付けた。静まり返った教室で私と爆豪はしばらく目を逸らさずに睨み合っている。

「落ち着けって」

途中で切島が間に入り視界を遮ったことで、爆豪の視線はまたもや緑谷へと移っていった。その際に聞こえた舌打ちが小さく、はっきりと響いていた。



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