Book-long-A

□嫉妬
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「戦闘訓練と救助訓練、あとはほぼ基礎トレだよね」

お茶子は箸を咥えながら、この数ヶ月を思い出すかように視線を天井へと移した。緑谷も考えるように顎に手を添え言う。

「試験勉強に加えて体力面でも万全に……あイタ!!!!」

ゴチッ!という鈍い音が鳴る。緑谷の後ろを通った人のトレーの端が頭に当たった音だ。だが、それは偶然じゃない。私は悪意のあるその一部始終をしっかりと視界にとらえていた。

「ああ、ごめん頭大きいから当たってしまった」

「物間……いまわざと……!」

B組の物間だ。明らかに当てに行ったというのに、あたかも偶然の事故のように言うその態度に苛立ちがこみ上げる。私は箸を置いて彼の次の動向を伺っていた。

物間のトレーにはオシャレに盛り付けられたフランス料理と、ワイングラスに入れられたグレープジュースが乗っている。

「君らヒーロー殺しに遭遇したんだってね」

その言葉にピクリと体が反応する。私だけでなく、緑谷も飯田くんも思わず視線を落とした。

「体育祭に続いて注目を浴びる要素ばかり増えてくるよねA組って」

そう言って恨めしそうに私達を見渡す物間を私はキッと睨んだ。無意識のうちに掌を強く握りしめる。

「ただその注目って決して期待値とかじゃなくてトラブルを引き付ける的なやつだよね」

「物間ァ……」

私がそう言ってゆっくりと立ち上がると、隣の席にいた葉隠さんにグッと腕を掴まれた。いや、正確には掴まれた感触があった。彼女は透明で姿は見えない。どんな状況かは彼女にしかわからないのだ。

「落ち着け、鏡見」

轟に宥められるも私の眉間のシワが元に戻ることはない。私の鋭い視線を浴び、物間は少しだけ戸惑った表情を見せるも懲りずに続けた。

「あー怖い!いつか君たちが呼ぶトラブルに巻き込まれて僕らにまで被害が及ぶかもしれないなぁ!ああ怖……ふっ!」

ガタンッと音を立てて物間が突然倒れ込む。私達に喧嘩を売るような発言を言い続ける物間の背後から、トンッと首元に手刀を振り下ろしたのは拳藤さんだった。拳藤さんは料理が溢れるのを避けるように物間の手元からしっかりとトレーを奪い取っていた。

「シャレにならん。飯田の件知らないの?」

拳藤さんの足元でぐったりと倒れ込む物間に私は変わらず鋭い視線を向けていた。



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