Book-long-A
□食堂
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昼休み。
私はいま食堂でみんなとご飯を食べている。今日はサバの味噌煮定食だ。そして私の正面では蕎麦をすする轟が座っている。最近では見慣れた姿ではあるが、それでも言わずにはいられない。
「轟、また蕎麦?」
「うん」
「……よく飽きないね」
彼は食堂で見かけるといつも蕎麦を食べている気がする。いくら冷たい蕎麦が好きとはいえ、こうも毎日食べていて飽きないのだろうか。私も食べるのは決まって日本食だが、轟ほど偏った選び方はしていない。
「そういえば梅雨ちゃん中間テストの成績6位だったもんね。さすが優等生」
私は葉隠さんを挟んだ先に座って食事をする梅雨ちゃんを羨ましそうな目で見ながらしみじみと言った。
「そんなことないわ。中間テストはヤマが当たっただけよ」
謙遜する梅雨ちゃんだが、その態度に全く嫌味は感じない。誰かさんと違うその人柄に、私は素直に彼女を尊敬することができた。
「私はその運もないからなぁ、あはは」
テーブルの端に座る芦戸さんは相変わらず呑気に笑っている。彼女にあまり危機感はないようだ。
「普通科目は授業範囲内からでまだなんとかなるけど、演習試験が内容不透明で怖いね……」
緑谷はそう言って不安げな表情を見せた。だが、私にとっては逆に演習試験に対して何の心配もないのだ。それこそ普段どおりで行けるはずだから。
「普通科目はまだなんとかなるんやな……」
梅雨ちゃんの隣で呟くお茶子の声が聞こえる。そんな言葉が聞こえれば聞こえるほど私にとっては何とかならないであろう普通科目への不安が心の中で渦巻いていくのだった。
「一学期でやったことの総合的内容とだけしか教えてくれないんだもの、相澤先生」
梅雨ちゃんも少しだけ不満そうに言った。私ですら聞き出せない情報だ。自分の受け持つクラスの生徒だからといって教えてくれるはずがない。
私はテストの話題に嫌気がさし、ズズッと煎茶をすすりながら轟と共に大人しくみんなの話を聞いていた。
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