Book-long-A

□焦り
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時は流れ六月最終週。期末テストまで残すところ1週間を切っていた。教室では上鳴が顔を青ざめ叫んでいる。

「全く勉強してねー!体育祭やら職場体験やらで……全く勉強してねー!」

中間テストでクラス最下位を誇る彼は現実を突きつけられ膝から崩れ落ちていた。

「いい訳はいいから今からでも頑張りなよ、最下位なんだから」

私は頬杖をつき、他人事のような態度でわざと意地悪を言った。自分のことは棚に置いて、というやつだ。それに対し、彼もすかさず言い返した。

「う……うるせー!強調すんなよそこ!鏡見だって俺と成績変らねぇだろ!」

そう。上鳴は最下位、私は18位だ。19位の芦戸さんは今も呑気に笑っているが、正直なところこの順位の人間は流暢にしている場合ではない。

「私はやってるもん。結果が出るかは別として」

私は手に持ったテキストをチラつかせながら言った。時間としてはやっている方だ。家では消太さんが目を光らせているのだからやらざるを得ない。それがどのくらい身についているかは定かではないが。

「でもさ、常闇が14位って意外だよね」

私は席で大人しくしていた常闇に思わず話しかけた。彼はいつも冷静で大人びていて、戦闘スキルも高く、頭もいい……と、思っていた。だが、意外にも彼は平均以下の成績を取っていたらしい。それを全く表情に出していなかったのも彼のすごいところだ。

「試験勉強は己との戦い。己の弱さが結果に繋がる」

そう言って常闇は少しだけ顔を曇らせた。

「中間はまぁ入学したてで範囲狭いし特に苦労なかったんだけどなー」

教室のあちこちではみんな不安を口にしている。感じていることはみんな同じのようだ。中間テストも苦労した私にとっては、林間合宿に行けるか行けないかの重要な分岐点である。みんなが楽しむなか、学校で補習なんてまっぴら御免だ。私は不安を打ち消すかのようにテキストを持つ手に力を込めた。


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