Book-long-A
□苛立ち
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「フィニーッシュ!!」
運動場に響くオールマイトの声。苛立つ爆豪、呼吸を整える私。そして3位という結果に喜ぶ峰田くんと落胆する切島と耳郎さんが一つの建物の屋上にいた。
「今回は爆豪少年と鏡見少女が同率一位だったが、みんな入学時より個性の使い方に幅が出てきたぞ!体力もついたな!この調子で期末テストへ向け準備を始めてくれ!」
今回褒められたのは大方、爆豪と峰田くんだろう。切島と耳郎さんは論外として、私は個性なんて使っていない。幅も何もないのだ。
「まじでムカつくぜ……お前」
そう言って私をギロリと睨むその顔は、もう見慣れていた。彼が苛立つ理由も分からなくもない。だが、それを一つ一つ気にしていたらきりが無いのだ。私は爆豪より、もっと考えなければならないことが目の前にあった。
「そっかもうすぐ期末テストか」
さらに落胆した表情を見せる切島と耳郎さんだが、私も他人事のようにはしていられなかった。筆記試験と演習試験がある期末テスト。演習試験は良いにしても、問題は筆記試験の方である。私は想像しただけで身震いさせた。
「俺、機動力課題だわ」
そう言う切島は相変わらず元気がない。なんだか今日はずっと変だ。
「また鍛錬場いこうよ。多分、徹鐡も同じこと考えてるだろうし」
そう言って私は切島に微笑みかけた。
「そだな……もっと力つけねーと」
そう言って自身の掌を強く握りしめるその姿を、私は探るように見ていた。放っておけない、私の中での気持ちはもう固まっていた。
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